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収用による借家人補償金の交付と課税の特例について

Q.賃借している建物が収用を受け、家主に建物の対価補償金が交付され、借家人である当社には、借家人補償金が交付されました。当社は、転居先を物色中で、転居先の土地又は建物を従来どおり賃借にするか、それとも買い取ることにするのかを考慮中です。収用の場合の課税の特例の適用は、どのようになりますか。

A.借家人が収用された建物から転居せざるを得なくなった場合、公共事業者から受ける借家人補償金を対価補償金と同じように扱います。この補償金には、新しい転居先での建物の賃借権や家賃の差額補償が含まれており、これらを新しい賃借権の権利金に使用する際は、税法上、繰延資産として扱われます。新しい場所を購入する場合も、その財産が事業用として使われるなら、代替資産として扱え、最大5,000万円までの特別控除を受けることが可能です。また、この借家人補償金は、借家人が直接公共事業者から受けるだけでなく、家主が一括で受けてその一部を借家人に支払った場合にも適用されるため、立退料として家主から受け取った場合も、収用等の場合の課税の特例の対象となります。

収用の場合の収益補償金について課税の特例が適用される場合

Q.収用によって起業者から受ける収益補償金、経費補償金、移転補償金等には課税の特例が適用されないそうですが、なぜですか。このうち収益補償金について、特に課税の特例が適用されるのは、どのような場合ですか。

A.収用によって、事業者からもらう補償金はいくつかの種類に分けられています。これには対価補償金や収益補償金などが含まれますが、これらの補償金がどのカテゴリーに属するかは、補償金の目的や計算方法、他の類似の補償との比較などを基に判断されます。しかし、それでも判定が難しい場合は、公正なところによって、カテゴリーが決められることもあります。対価補償金と名付けられた補償金のみ、課税の特例が適用されます。これは、収用による強制的な資産譲渡の対価であり、課税特例がなければ、法人が不当な税負担を負うことになるためです。収益補償金などの他の補償金は、通常、収用による収益減少や費用増加と関連していて、所得の増加を引き起こさないため、特例措置は必要ありません。しかし、例外的に、補償金の実質が対価補償金とみなされるべき場合や、法人が建物などの収用に際して受ける補償金が、新たに同じ資産を買い取る際の費用に足りない場合には、その不足分を対価補償金として計算できるような特例措置が取られています。

土地収用法等により収用又は使用される場合の特例の適用

Q.土地収用法等の規定に基づいて土地が収用された場合の課税の特例は、収用委員会の裁決を経て強制収用された場合に限りますか。また、強制収用でなく、強制使用の方法をとられたときはいかがでしょうか。

A.法人が土地を収用法等に基づき収用され、補償金を受け取る際には、税の特例が適用されますが、実際に強制収用が行われるケースは少ないです。なぜなら、企業は可能な限り行政の介入を避け、強制収用に至る前に、土地の所有者との話し合いによる買取を目指すからです。そのため、強制収用でなくても、資産の買取りを拒否した場合には、土地収用法等に基づいて収用され、その際に補償金を受け取ることで税の特例が適用されるのです。加えて、土地やその上の権利については、企業による収用のほか、使用された場合にも補償金を受け取るとき税の特例が適用されます。ただし、土地の価値が使用前に比べて特定の割合以下に下がる場合に限られます。このような場合、土地の使用は譲渡とは異なるが、土地等の価値が下がる場合は、実質的に土地の一部を譲渡したとみなされるため特例の対象となります。この特例により、土地等を使用させることで生じた補償金によって資産を取得した際の差益の計算方法が定められています。

収用等の場合の圧縮記帳の適用 と特別控除の適用 との関係

Q.3月31日決算の会社が、令和5年7月に工場用地の一部を土地収用法の規定に基づき道路用地として収用された場合、補償金7650万円を受け取り、収用された土地の帳簿価額は750万円、譲渡に要した経費は150万円です。この補償金で、当期中に別の土地を6000万円で購入した場合、収用の場合の課税の特例の適用はどのようになりますか?

A.まず、会社が意図しないで資産を強制的に買い取られるケースでは、その取得した補償金で別の資産を買った際、税法上2つの重要な特例が適用されます。一つ目は、収用等について資産を取得してから2年以内に代替資産を取得した場合、その代替資産に対して圧縮記帳の特例が使えるというものです。この場合、補償金から新しく購入した土地の金額を差し引いた後、さらに収用された土地の帳簿価額と譲渡にかかった費用を差し引いた金額が、圧縮記帳の対象となります。具体的には、6000万円から譲渡資産の帳簿価額と譲渡費用を差し引いた5400万円が、新しく購入した土地の帳簿価額として設定されます。この結果、新しい土地の税務上の帳簿価額は600万円となり、これによって通常は課税される7650万円から5400万円を差し引いた1350万円が今回の収用で課税されます。

二つ目は、「収用資産の譲渡益」と「一暦年につき5000万円」のいずれか低い金額について、特別控除の特例を適用することができるというものです。このケースでは、特別控除の額が5000万円になります。これらの特例は、法人が意図しない状況下で資産を失い、それを補填するための補償金で代替資産を取得するときに税負担を軽減するために設けられています。ただし、これらの特例の適用を受ける場合は、その詳細を申告書に添付する必要があります。

譲渡資産が2以上ある場合の差益割合の計算

Q.3月31日決算の会社が令和6年3月期中に譲渡した土地が3件あり、この期間中に本社ビルを1億円で建築しました。この本社ビルを買換資産として認識し、租税特別措置法第65条の7第1項第3号の買換え特例を受けたいと考えています。ただし、土地譲渡代金が1億円以上ある①の土地の差益割合だけで圧縮限度額を計算してもいいか、また②、③の土地も加えなければならないか、さらに本社ビルの取得価額が2億円だった場合の計算方法について教えてください。

A.譲渡資産の差益割合は、原則として各資産ごとに計算しますが、特定の条件下ではまとめて計算することができます。ご質問のケースでは、買換資産と予定されている本社ビルの取得価額が1億円で、①の土地の譲渡代金だけでこの金額に達していますので、この土地の差益割合のみで計算することが可能です。その結果、本社ビルの圧縮限度額は7200万円となります。しかし、買換資産の取得価額が2億円だった場合、①、②、③の土地の合計譲渡価額を利用し、差益割合を計算する必要があり、その場合の圧縮限度額は1億400万円になります。依らず、譲渡した資産ごとに計算するか、または全ての資産をまとめて計算するしか認められていません。また、特例の適用を受ける買換資産を選ぶ際には、法人が任意で決定できます。減価償却資産を買換資産とするケースでは、耐用年数の長い資産から選択することも可能です。

資本的支出を買換資産として圧縮記帳の適用が可能か

Q. 租税特別措置法の定めにおいて、法人が所有する建物の資本的支出などが買換資産として圧縮記帳の適用を受けることはできますか?

A. 買換資産として圧縮記帳の適用を受けるには、取得した資産が新しく独立した資産である必要があります。したがって、既に所有している建物などへの改造や改良については、それが資本的支出であっても買換資産とは見なされません。しかし、建物の増築や構築物の拡張などにより、実質的に新たな資産を取得したとみなされる場合は、買換資産として圧縮記帳の適用が可能です。新しく取得した資産に対する改良や改造にかかった費用は、新たな資産の取得費用として扱われるため、取得日から1年以内に実施された場合、買換資産の取得価額として圧縮記帳の適用を受けることができます。また、新たに賃借した資産への資本的支出も新たな資産の取得に該当するため、これらに関しても圧縮記帳の適用が可能です。

譲渡資産の譲渡時期と買換資産の取得時期の関係

Q.特定の資産の買換えの場合の課税特例を受けるにあたり、譲渡資産の譲渡事業年度と買換資産の取得時期との関係はどのように規定されていますか?

A.特定の資産を買換える時の税務上の特例は、資産を売った事業年度に新しい資産を購入し、購入日から1年以内にその資産を事業で使い始めるのが基本です。しかし、買換資産の取得時期には柔軟な規則があります。具体的には以下の3つのパターンがあります。

1. 資産を売った事業年度内に新資産を購入する場合、購入日が売却日より前であっても問題ありません。

2. 資産を売った事業年度の次の事業年度から1年以内に新資産を購入する場合、特別な勘定を経理することで一定の金額の損金計上が認められます。この特別勘定には、資産の種類や取得予定日などを記載した書類を作成し、税務申告に添付する必要があります。

3. 資産を売った事業年度の開始日前1年以内に新資産を取得し、取得日から1年以内に事業で使い始めた場合(特別な事情があれば3年以内に延長可能です)、この場合の新資産は先行取得資産と呼ばれ、減価償却資産の場合、以前の減価償却費に基づく金額を減じて圧縮基礎取得価額を計算しなければなりません。また、買換え特例の適用を受けるためには、事業年度終了後2か月以内に所轄税務署長に該当資産についての届出書を提出する必要があります。

これらのルールには、資産を売るタイミングと新しい資産を購入するタイミングの柔軟性が確保されていますが、特定の手続きや条件を満たす必要がある点に注意が必要です。

借地権の返還に当たって立退料を受けた場合の圧縮記帳

Q.昭和50年代からの借地について地主から立退きを要求され、借地上の工場を撤去して移転することになりました。新工場の土地建物は、地主から受領する立退料で取得する予定です。特定の資産の買換えの場合の圧縮記帳の特例が適用されますか?

A.はい、適用されます。所有期間が10年超える国内の土地や建物を売却し、同じく国内の土地や建物を新たに購入する場合、租税特別措置法に基づく圧縮記帳の特例が利用できます。この場合、借地権も対象に含まれますので、地主に借地権を返還し、立退料を受け取ったケースも借地権の譲渡に該当します。ただし、譲渡資産として認められるのは立退料の中で借地権の価値に相当する部分のみです。立退料には、借地権の価値相当額、建物の買取価格、移転に伴う諸費用や営業損失の補償などが含まれることがありますが、圧縮記帳をする際は借地権の価値相当額と建物の買取価格のみが対象となり、移転費用などは含まれません。

長期所有土地等からの買換えの場合の圧縮割合

Q.所有期間が10年を超える資産を譲渡して、東京23区内に所在する資産に買い換える予定ですが、東京23区等大都市圏にある資産に買い換える場合、圧縮割合が縮小されると聞きました。これについて説明してください。

A.租税特別措置法では、10年以上保持していた資産を売却し、新たに資産を購入する際、大都市圏内への資産買換えである場合、通常よりも圧縮割合が小さくなるケースがあります。これは、大都市圏への過度の集中を避け、地方の活性化を図る政策の一環です。具体的には、地方への本店移転を伴う買換えでは圧縮割合が拡大し、一方で東京23区などの集中地域に買換える場合は、圧縮割合が縮小します。圧縮割合の具体的な数値は、買換資産が本店資産である場合や集中地域外への買換えなどによって異なり、60%、70%、75%、90%などの割合に設定されています。また、集中地域から同地域への買換えの場合は、圧縮割合は80%となります。従って、もし譲渡資産が集中地域にあった場合は、東京23区にある資産に買い換えた場合でも圧縮割合は80%に保持されます。

長期所有土地等からの買換えの場合の譲渡資産と買換資産の要件

Q.当社は約30年保有している土地と建物を売却することとなり、特定の資産の買換えの圧縮記帳を検討しています。この特例を受けるための譲渡資産と買換資産の要件について説明してください。

A.御質問の買換えの特例は、長期所有土地等の買換えに関するもので、これを受けるには以下の要件を満たす必要があります。

1.譲渡資産の要件:譲渡資産は、国内の土地、建物、またはその附属設備を含む構築物であり、所有期間が10年を超えるものです。所有期間は、資産を取得した翌日からその資産を譲渡する年の1月1日までの期間と定義されています。なお、特定のケースでは所有期間の計算方法が変わる場合があります。例えば、適格合併や適格分割、適格現物出資、特別の法律に基づく承継などによって資産が移転された場合、その資産を取得した日が変わる可能性があります。

2.買換資産の要件:買換えによって取得する資産は、国内の土地、建物、または構築物であり、特定の条件を満たす必要があります。土地の場合、面積が300平方メートル以上であること、または事務所、事業所、その他特定の施設の敷地として使用される土地であることが条件です。特定施設には、事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅などが含まれますが、福利厚生施設は除外されます。さらに、駐車場としての用途も認められる場合がありますが、建物や構築物の敷地として使用されていない場合、一定のやむを得ない事情に基づくものに限られます。