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採算を承知の上で生産した製品の評価減

Q.採算がとれないことが明らかでも製品の品揃えのために生産を続けた場合、事業年度終了時に保有するその製品を販売価額まで評価減できるのか、税務と企業会計のそれぞれの観点から教えてください。

A.税務の観点からは、製品を販売価額まで評価減することが認められるのは、製品が物理的または経済的な価値の大幅な損失を受けた場合のみです。採算がとれないことを理由にした評価減は認められません。しかし、もし企業が低価法を評価方法として選択している場合は、この方法に基づいた評価減による損金算入が認められる可能性があります。ただし、採算の良い製品の販売を促進するためのセット品に該当する場合、低価法の適用による評価減は行えません。

企業会計の観点からは、保守主義の原則に従って、製品の正味売却価額が取得原価よりも低下している場合には評価減を行うべきです。これは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合、品質低下や陳腐化に限らず、帳簿価額を減額する会計処理として考えられます。したがって、正味売却価額までの評価減が必要とされ、税務と企業会計の取り扱いの差異は申告調整で対処すべきとされています。

仕損じ品の評価減

Q.陶器製造会社です。生産工程で不可避的に生じたきずもの、いびつものは、年に1回開催される安売り市で処分します。安売り市で売れると見込まれる価額まで、その製造原価から評価減することができますか。

A.棚卸資産が物理的な欠陥により通常の方法で販売できなくなった場合、損金処理により評価減が可能です。ただし、これは製造時には良品だったがその後、例えば陳列や運送で物理的な破損や品質変化が生じた場合に限ります。製造時から物理的な欠陥がある仕損じ品には適用されません。生産工程で不可避的に生じるきずものやいびつものは仕損じ品に分類され、良品とは異なる価値をもって原価計算されます。これらの品物の評価減は、実際の原価、市場価格、または額が少ない場合は備忘価額に基づいて算定された評価額を、総製造費用から差し引くことにより行います。仕損じ品は、見積売却価格から販売後のコストと通常の利益を差し引いた価格で見積もられ、その見積もり価格を総製造費用から差し引いた金額が良品の製造原価として計算されます。

定期積金の給付補填金

Q.定期積金の給付補填金は、なぜ利子所得とならないのですか。

A.定期積金の給付補損金は、経済的には通常の預金の利息と似ていますが、法律上の契約の性質が異なります。通常の預金は金を預ける単純な契約ですが、返してもらう権利があります。これを「片務契約」と言います。しかし、定期積金契約とは、契約者が定められた期間ごとにお金を支払い、金融機関は定められた時期にお金を返す義務がある「双務契約」です。そのため、積金とその給付金の差、つまり給付補填金は、契約上の違いにより利子所得とは見なされず、雑所得として扱われます。昭和63年4月1日以降に受け取る給付補損金に関しては、所得税が源泉分離課税されます。

需要を見込んで過剰生産した棚卸資産の評価減

Q.得意先からの某製品の部品1000個の受注に対し、生産コストを下げるため2000個生産し、残り1000個を次回の受注時に納品する予定でしたが、得意先のモデルチェンジにより、売れる見込みがなくなりました。このような場合、過剰生産した部品の評価減はできないのでしょうか?

A.棚卸資産の時価が物価変動、過剰生産、建値の変更などによって下がっただけでは、評価損の計上が認められないことが一般的です。しかし、ご質問のケースでは、得意先のモデルチェンジにより該当部品がこの先一切使われる可能性がないため、これは過剰生産した品物が通常の方法で売れる見込みがある状態とは異なります。この場合、棚卸資産が将来販売不可能になったとして、評価減を適用できると考えられます。評価減を行う際の時価は、部品を解体して材料として再利用する場合、その材料の価値から解体費用を差し引いた金額となります。一方、解体以外に処分方法がない場合は、その処分予定価格が時価となります。

株式売買の委託が履行されなかったことに基づく損害賠償金

Q.株式売買の委託をしましたが、証券会社のミスで売買されず、翌日別の証券会社を通じて行った売買により当初の期待利益が得られませんでした。この際、最初の証券会社に対して損害賠償を請求し、支払いを受けましたが、この賠償金の課税関係はどうなりますか?

A.通常、心身の傷害に基づき受け取る損害賠償金や、不法行為や突発的な事故による資産の損害に対する損害賠償金は非課税ですが、物的損害に対する収益の補償は課税されます。あなたが受け取った損害賠償金は失われた利益を補うもので、非課税とはなりません。また、この損害賠償金は、株式の譲渡所得などに代わるものとは見なされず、適切に行われた株式の譲渡とは関係がないため、総合課税の雑所得として扱われます。

社債の割引発行による償還差益

Q.割引債の償還差益の課税関係を教えてください。

A.昭和63年4月1日以降に発行された割引債の償還差益は、一般に18%の源泉分離課税が適用されます。しかし、特定の社債や債券の場合には16%の税率が適用されます。特に、平成25年から令和19年までの間は、これに加え復興特別所得税(基準所得税率の2.1%)が課税されます。割引債を発行する際の源泉徴収義務は発行者にあり、償還時に差益に税率を乗じて計算された金額が源泉徴収されます。ただし、外貨債や特定の公的機関によって発行された債券など特定の割引債はこの規則の例外とされています。源泉分離課税の適用を受ける債券については確定申告の必要はなく、確定申告による還付も受けられません。なお、平成28年1月1日以降に償還される償還差損益については、15%の申告分離課税の対象となり、一定の条件を満たす公社債に関しては雑所得として総合課税の対象となります。また、平成27年12月31日までに一部の公社債を売却した所得は非課税ですが、特定の割引債の譲渡所得は非課税の例外とされ、確定申告が必要になる場合があります。

消費者の感覚にあわないため大量返品を受けた製品の評価減

Q. 当社のアイデアにより生産した製品が消費者の時代感覚に合わず、大量返品を受けました。事業年度終了時にはまだ手元に残っており、他に利用することができず、会社の信用問題にもかかわるため格安販売せずに廃棄する予定です。この製品は事実上無価値に等しいのですが、時価をゼロとして評価減しても良いですか?

A. 棚卸資産が災害で大きく損傷したり、明らかに古くなったりした特別な状況では、その棚卸資産の帳簿上の価値を損金処理によって時価まで下げることができます。この場合の時価とは、その資産が普通に売買される際に通常つけられる価格のことです。また、特別な事情として製品が破損したり、売り物としての価値を失った場合が挙げられます。質問の製品が消費者の時代感覚に合わず、大量返品を受けたことは、この製品が明らかに時代遅れとなった事例に相当しますから、評価減の条件を満たします。問題となるのは、事業年度終了時の製品価値が実際にゼロかどうかです。貴社が信用を守るために廃棄を選んだとしても、それは会社方針によるものであり、そのために自動的に製品価値がゼロになるわけではありません。もし事業年度終了時に廃棄する予定の製品があれば、その損失は廃棄損として計上できますが、年度末に残っている製品については、将来何らかの形で換金が可能である可能性が残されています。つまり、製品の価値は、廃棄する予定という会社方針に基づくものではなく、時代遅れであることを考慮に入れた上で、客観的に形成される換金可能価格です。したがって、廃棄する予定であっても、時価を客観的に算定する必要があります。

新株を引き受けたことによる所得

Q.知人が経営する上場法人が増資し、その際に新株の割当てを受けることになりました。私が払込みを予定している額面の約3倍の現在の株価でこの場合、課税の対象になるのでしょうか。

A.法人が増資のために新株を発行し、既存株主が所有する株数に比例してこれを受け取った場合、所有する株式の数は増えますが、株式が表す経済的価値の増加はないため、所得税の課税対象にはなりません。しかし、既存の株主が所有する株数を超えて新株を受けた場合や、新たに株主になった場合には、株の時価が実際に払い込んだ金額を超える部分に対する利益について所得税の課税対象となります。株式を取得する権利が与えられた場合、これが発行法人の役員や従業員(退職者も含む)に対して給与や賞与、退職金に相当する場合は給与所得や退職所得として、その他の場合は一時所得として課税されます。あなたの場合は一時所得として課税されます。株式を取得する権利に関連する所得の計算は、その権利に基づく払込みの期日における株価から、その権利を取得するために支払った金額とそれを行使する際に払うべき金額を差し引いた金額とします。所得の発生する時期は、基本的に株式の取得に申し込んだ日ですが、申込み日が不明な場合は申込期限で判断されます。ただし、株式の割当てを受けた後に申し込みをしなかったり、申し込みを取り消したり、払込みを行わなかったりして権利を失った場合には、税金は発生しません。

労働者協同組合の従事分量配当

Q.私は労働者協同組合の事業に従事したことから、その程度に応じた剰余金の分配金を受け取ることになりました。この分配金は、どのように課税されるのですか。

A.労働者協同組合から得られる分配金は、労働者協同組合が利益を得た後、必要な経費を除いて配当されるものです。具体的には、組合の損失補填、準備金、就労創出等の積立金、教育繰越金を引いた後の利益から配当されます。さらに、剰余金の配当は、組合員が事業にどれだけ関わったかに基づいて決定されます。これは従事分量配当と呼ばれ、単純な出資額ではなく、事業への貢献度に応じて分配されます。労働者協同組合は法人税法上、一般の法人と同じ扱いを受けるため、分配金は法人税で既に課税されたあとの所得から支払われるので、所得税では「配当等」として扱われます。また、この分配金に対しては、支払時に20%の税率で源泉徴収されることになります。さらに、平成25年から令和19年までの期間には、復興特別所得税も適用されます。

信用取引で受け取る配当金と税金の取り扱い

Q.株式の信用取引をしており、株主名簿閉鎖日5日前に買い付けた株式の配当金を証券会社から受け取りました。この配当金は配当所得として申告する必要がありますか?また、配当金に15.315%の源泉徴収税が引かれていますが、これは所得税額から控除できますか?

A.信用取引では、証券会社からお金を借りて株を買っても、その株を実際には所有していないため、本来の配当金を受け取ることはできません。しかし、買った株に配当があれば、証券会社から配当相当の金額(配当落調整金)を受け取ることがあります。受け取った配当落調整金は、買った株式の取得価額から差し引く形で処理されるため、配当所得として申告する必要はありません。また、15.315%の源泉徴収税額については、配当落調整金の計算に使われるだけであり、実際の税金として計算される訳ではないので、所得税の計算で差し引くことはできません。