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受益者等が存在しない信託の課税関係

Q.受益者等が存在しない信託を設定した場合の課税関係はどうなりますか。

A.受益者等が存在しない信託を設定した場合、その信託された資産は法人に贈与したと見なされるため、その資産が所得を生む資産である場合は、市場価値でその資産の譲渡があったとして所得税がかかります。具体的には、贈与を受けた法人に対して、その資産が移転されたものとみなし、その時の価値に基づき所得税が課せられます。さらに、その法人には、受け取った利益に対する法人税も課税されます。この信託の種類は、法人税が課税される「法人課税信託」として取り扱われ、この信託を受ける法人を「受託法人」と呼びます。また、後で受益者が現れる場合、その受益者は受託法人から信託財産を帳簿価格で引き継ぐ形で取り扱われ、この時点での課税は生じません。

スタートアップへの投資に係る優遇措置(エンジェル税制・投資段階)

Q.令和5年度の税制改正で、スタートアップへの投資についての課税上の優遇措置が拡充されたと聞いたのですが、どのような制度になっているのでしょうか。

A.エンジェル税制は、ベンチャー企業への投資を促進するための税制上の特例措置です。令和5年度の税制改正で、これまでの優遇措置を大幅に拡充しました。改正前は、特定中小会社への投資時や特定新規中小会社への投資時に、投資した金額を一定枠内で収益から控除できる制度がありました。令和5年度の改正では、自己資金での株式売却後に特定新規中小会社へ再投資した場合にその投資額を収益から控除できる措置や、プレシード・シード期のスタートアップへの再投資額を収益から控除できる措置が新しく加わりました。これらの措置により、再投資により得た株式を売却しても投資額の圧縮は行われず、課税が繰り延べられることなく実現します。また、再投資額が20億円を超える場合は特別な計算方法で取得価額等を圧縮します。さらに、対象となる株式の範囲拡大や確定申告時の書類提出要件の見直し、確認書類の削減などの改善も行われました。

信託受益権の譲渡があった場合の収入金額の計算

Q.信託受益権を譲渡した際の収入金額の計算方法について教えてください。

A.信託受益権を譲渡した場合、収入金額の計算は、受け取った譲渡代金に、マンション建築のための借入金の残額や、入居者からの預かり保証金等を加えた額となります。具体的には、受け取った金額にこれらの金額を足し合わせることで、譲渡所得の申告における収入金額を算出します。金銭だけでなく、債務の引き受けなどがある場合には、その債務引き受け等による経済的利益も収入金額に加えて計算します。土地や建物の信託受益権を譲渡する際に、その信託財産に関連する借入金がある場合、譲渡代金からその債務を控除した金額を受け取ることになります。このような場合、収入金額は受け取った譲渡代金に、控除された債務に相当する金額を上乗せして計算します。

特定中小会社の株式の譲渡損失に係る繰越控除等(エンジェル税制・譲渡段階)

Q.特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の特例により、株式の譲渡損失の繰越控除ができるとのことですが、それはどのような制度ですか。

A.特定中小会社が発行する株式にかかる譲渡損失の繰り越し控除などの特例とは、税制面で支援を行い、創業期のベンチャー企業への個人投資家からの資金提供を促進するために設けられています。この特例は主に以下の2つの部分から成り立っています。

1. 価値喪失の損失の特例: 特定の条件下で特定中小会社が発行する特定株式を取得した投資家が、その株式が価値を喪失し損失を受けた場合、その損失額をその年の株式等の譲渡所得の計算において、譲渡損失とみなすことができます。

2. 譲渡損失の繰り越し控除の特例: 特定株式の譲渡によって生じた損失が、その年の譲渡所得から全額控除できなかった場合、一定の要件を満たすことで、その控除できなかった金額を翌年以降3年間にわたって、一般株式や上場株式の譲渡所得から控除することができます。

この制度の適用を受けるためには、特定中小会社が設立時または設立後に発行した株式を金銭で直接購入する必要があります。相続や相対取引によって取得した株式や、ストックオプションの行使による経済的利益の非課税制度の適用を受ける株式は、この特例の対象外とされています。

信託財産を譲渡した場合の譲渡費用

Q.私は土地を信託し、その信託の受益者となっていますが、この度、その信託財産である土地の一部が譲渡されることとなります。この土地の譲渡に際しては、信託報酬を受託者に支払っていますが、この支払った金額は譲渡所得の計算上何か考慮されるのでしょうか。

A.譲渡される土地に関する信託報酬は譲渡費用として扱われます。具体的には、受益者がその信託の信託財産として資産や負債を有していると見なされる種類の信託で、信託財産が譲渡される場合、それはまるで受益者自身が直接その資産を譲渡したかのように取り扱われます。この状況で、資産の譲渡に関連して受益者などが受託者に支払う信託報酬は、譲渡費用に含まれることになります。

税制適格ストックオプションの課税関係

Q.税制適格ストックオプションを取得した場合の課税関係について教えてください。

A.税制適格ストックオプションについては、特定の条件を満たす場合、ストックオプションを使って株式を得た日に対する所得税の課税を先延ばしにし、その株式を売却した日に課税する制度があります。この場合、所得は株式譲渡益として扱われ、給与所得よりも譲渡益の税率が低いため、税負担が軽減される可能性があります。税制適格ストックオプションには以下の主な条件があります。

1. 無償で取締役等に付与されること。

2. 付与決議の日から2年経過後から10年以内(特定の会社においては15年)の間に行使されること。

3. 行使時の権利行使価額の年間合計が1,200万円を超えないこと。

4. 行使に際しての1株あたりの権利行使価額が、その契約締結時の1株あたりの価額以上であること。

5. 取締役等によるストックオプションの譲渡が禁止されていること。

6. 株式の交付が会社法に違反しないこと。

7. 行使により取得した株式の保管を金融商品取引業者等に委託する取り決めがあること。

税制適格ストックオプションの付与時の経済的利益は、譲渡制限のため課税されません。行使時(株式取得時)の経済的利益については税の課税が繰り延べられます。行使して得た株式を売却した場合、その売却益が課税対象となります。令和5年度の税制改正では、特定のストックオプションについて行使期間が15年間に延長される等の変更がありました。

税制非適格ストックオプション (信託型)の課税関係

Q.勤務先から信託会社を通じてストックオプションを取得し、その権利を行使することにより取得した株式を売却しました。この場合の課税関係について教えてください。

A.あなたが取得し行使した税制非適格ストックオプション(信託型)の課税については以下の通りです。

1. 信託が設立された時点では受益者がいないため、信託に資金を投入した発行会社やその代表者に対して法人税が課されます。

2. 信託会社がストックオプションを正当な価値で購入した場合、経済的利益が生まれないので課税されません。

3. 役職員が信託からストックオプションを付与された時、直接の課税は生じませんが、役職員は購入時に信託が支払った金額を購入価額として引き継ぎます。

4. 役職員がストックオプションを行使して株式を取得すると、その経済的利益は給与所得として課税されます。経済的利益の計算は、行使時の株価から購入価額と権利行使価額の合計を差し引いた金額になります。この場合は550です。発行会社はこの利益に基づいて源泉所得税を徴収し納税する必要があります。

5. 役職員が取得した株式を売却すると、その譲渡益は株式譲渡益課税の対象となります。譲渡益は、譲渡時の株価から行使時の株価を差し引いた金額、ここでは200となります。

要するに、信託制度を使用してストックオプションを行使し株を売却する過程で生じる利益は、特定の条件下で給与所得および株式譲渡益として課税されると理解できます。

税制非適格ストックオプション(有償型)の課税関係

Q.勤務先から適正な時価で有償取得したス トックオプションの場合の課税関係について教えてください。

A.税制非適格ストックオプション(有償型)を適正な価格で購入した場合、経済的な利益が発生しないため、税金はかかりません。ここで、①ス トックオプションを購入した際には、経済的利益がないので税金の対象になりません。②ス トックオプションを使って株を手に入れた時も、その時点での経済的利益は税金の対象外です。③しかし、その株を売ったときは税金の対象となり、売却益は売価(1,000)からス トックオプション購入価格(50)と権利行使価格(200)を引いた金額(750)として計算されます。

税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型の課税関係)

Q.勤務先から譲渡制限のある税制非適格ストックオプションを無償で取得しました。この場合の課税関係について教えてください。

A.勤務先から譲渡制限付きの税制非適格ストックオプションを無償で受け取った場合、そのストックオプションをそのまま譲渡して利益を得ることができないため、取得時には課税されません。しかし、そのストックオプションを行使して株式を取得した時には、その時の株価と権利行使価額の差額が給与所得として認識され、所得税がかかります。例えば、ストックオプションの付与時の株価が200、行使時の株価が800(権利行使価額200)であれば、行使時には600の給与所得として課税されます。その上で、発行会社はこの経済的利益に対して源泉所得税を徴収して納付する必要があります。最終的に、行使して取得した株式を売却した場合には、売却時の株価と行使時の株価の差額が株式譲渡益として課税されます。つまり、譲渡時の株価が1000、行使時の株価が800であれば、200の株式譲渡益が発生し、税金がかかることになります。

源泉徴収選択 口座における上場株式等の配当等 と譲渡損失 との損益通算

Q.特定口座(源泉徴収選択口座)で上場株式等の譲渡及び配当を受け取っていますが、損益通算後の配当所得(50万円)のみを確定申告で申告すればよいかどうか知りたいです。

A.特定口座(源泉徴収選択口座)において、上場株式等の配当と譲渡損失を含めた損益通算を行うことは可能です。しかし、確定申告を行う場合には、損益通算前の金額で申告する必要があります。つまり、特定口座での配当所得(100万円)と譲渡損失(△50万円)、そして一般口座での譲渡益(30万円)をすべて申告するべきです。その結果、合計の所得として計算される税金を納付することになります。