admin のすべての投稿

法人成りの場合の資産の引継価額

Q. 法人の設立に際して、個人事業当時に所有していた事業用資産を法人に引き継ぎましたが、その引継価額の適切さについて教えてください。

A. 個人事業を法人に変える際、個人が持っていた資産や負債を法人に引き継ぐことがあります。このとき、どのように評価するかが問題になります。通常、固定資産のような物は市場価格で売買されるため、個人から法人へ譲渡する際も、市場価格に基づいて行うのが一般的です。譲渡価額が市場価格より高い場合、個人は法人から贈与を受けたことになります。逆に、譲渡価額が市場価格より低い場合、その差額は個人が法人に贈与したことと見なされます。税法上では、市場価格の半分以下で資産を譲渡したとき、実際は市場価格で譲渡したと見なされ、所得申告が必要です。また、設立した法人が同族会社で、時価より低く譲渡し税負担が不当に減少する場合、税法上その行為は否認されます。法人税法では、市場価格より高く購入した場合、その超える部分は事実上の贈与と見なされます。また、市場価格より低い価額で引き継いだ場合、その差額は法人の利益に入ります。したがって、通常は市場価格を基準にすることが望ましいとされています。あなたが引き継いだ車両の価額は、市場価格に基づいているため、問題ないと思われます。商品についても、その引継価額が通常の販売価格の70%以上であれば問題ないとされています。

分離譲渡所得が特別控除額未満である場合の扶養親族等の判定

Q.私は無職の主婦ですが、この度、私たち家族が永年居住していた居宅を売却しました。その居宅は、私が所有していたものであり、その譲渡益は1,000万円です。しかし、居住用財産を譲渡した場合は、3,000万円の特別控除の特例の適用を受けるため譲渡所得はないことになると聞いています。私の場合、夫の所得税の計算上、配偶者控除の対象になるのですか。

A.譲渡所得がある場合、特別控除額を引く前の譲渡所得の金額が所得税の計算において配偶者控除や配偶者特別控除の対象となるかどうかを決定します。所得税計算上、配偶者控除の対象がなれるのは、年間の合計所得金額が48万円以下の人です。さらに、年間の合計所得金額が133万円以上の場合、配偶者特別控除の適用を受けることはできません。あなたの場合、居宅の売却による譲渡益は1,000万円であり、特別控除額を引く前の金額として考えると、夫の所得税計算における配偶者控除や配偶者特別控除の対象にはなりえません。

飲食店の自家消費

Q.ビール1本当たり265円で仕入れ、これを400円で顧客に提供している飲食店が、このビールを家事用に消費する場合、事業所得の収入金額に算入する売上金額は通常売価の70%と見積もって1本当たり280円としなければなりませんか。もし、この自家消費分の仕入代金を事業主貸勘定から支払うこととし店の仕入額に含めないこととしたらどうなりますか。

A.通常、ビジネスで使う資産を家庭用に消費する場合、その取得価額(もしくは通常販売価格の70%の価値がそれを下回る場合)を売上として扱わなければならないというのが基本です。しかし、飲食店の場合、米や副食材、お酒などは家庭で直接使用するものであり、事業用として購入したものは実質的に家庭での必需品とみなすことができます。そのため、自家消費分の仕入れを事業主の借方勘定に移して、売上原価から外す、そして売上として計上しない方法が望ましいです。しかし、これは飲食店で自家消費が完全に不可能というわけではなく、家族の慶弔事で従業員の助けを借りて食料やお酒を消費するような場合には自家消費の記録が必要になり、その場合は1本280円で売上に計上することになります。

預り保証金の経済的利益

Q.物品販売業を営む私が所有する土地をテナントビルの所有を目的としてA株式会社に設定した一般定期借地権の契約下で預かる無利息の保証金1億円について、課税関係はどうなるのでしょうか。保証金は店舗の改築費用、自宅の建築費用、及び定期預金に運用されています。

A.土地をA株式会社に貸し出し、無利息で保証金として1億円を預かった場合、この保証金に対する経済的利益は課税の対象となります。具体的には、保証金を運用した目的に応じて税の取り扱いが以下のように区分されます。

1. 保証金が不動産所得や事業所得などの資金として使われている場合: 適正な利率で計算した利息相当額を不動産所得等の総収入に含めます。また、同じ金額を必要経費にも算入します。

2. 保証金が金融資産に運用されている場合: 金融資産からの利子収入は、保証金の経済的利益とみなされ、課税対象となります。この場合、保証金の経済的利益の計算は不要です。

3. 1と2以外の場合: 適正な利率で計算した利息相当額を不動産所得等の総収入に含めます。

従って、あなたの保証金の運用方法に基づき、店舗の改築費用は第1区分、自宅の建築費用は第3区分、定期預金は第2区分に該当します。令和4年分の不動産所得の総収入に算入される保証金の経済的利益は、2,100円となります。また、店舗の改築費用にかかった経済的利益の額600円は、事業所得の計算上、必要経費に算入されます。

譲渡所得等の課税の特例

Q.私は以前800万円で購入した宅地を未利用のまま所有していましたが、この度、知人にこの宅地を譲ることになりました。ところが土地価格の下落により、この宅地の現在の時価は、500万円程度となっています。この土地を時価相当の500万円で売却すると300万円の損失がでますが、この損失は他の所得と通算できるのでしょうか。

A.あなたが譲渡することになった未利用の宅地に関して生じる損失は、他の所得と通算することができません。昔は個人が土地や建物を売って損失が出た場合、その損失を他の譲渡所得や様々な所得から引くことができました。しかし、平成16年1月1日以降に売却する土地や建物で損失が出た場合、その損失は他の土地や建物の売却で得た利益からのみ引くことができ、土地や建物以外の収益から引くことはできなくなりました。また、その年に他の資産を売って損失が出たとしても、その損失を土地や建物の売却利益から引くことはできません。ただし、5年を超える期間所有していた住宅用の財産を売った場合は、一定の条件下で損失を他の所得と通算することや、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越して控除することが可能です。ですが、あなたのケースでは譲渡される物件が未利用の宅地であるため、他の所得との損益通算はできないこととなります。

広告宣伝用資産の受贈益

Q.販売成績が良いため、仕入先の寝具メーカーから、メーカーの製品名がサイドに大きく描かれた四輪貨物自動車2台(時価120万円相当/台)を1台あたり100万円で譲り受けました。この受贈益140万円は課税されるか、また、減価償却費の計算はどうなるか。

A.例えば、販売成績が良いという理由で、サプライヤーから特定の商品名が目立つように書かれたバン2台を時価より低い価格で購入した場合、この受贈益は課税対象となります。金銭だけでなく、権利や他の経済的利益の価値も収入に含まれるからです。この場合の経済的利益(つまり、時価と実際に支払った価格の差額)は、総収入として報告する必要があります。

宣伝目的で車やその他の資産を無償や割安価格で取得すると、その価値の2/3から実際に支払った金額を引いた額を経済的利益として計算します。宣伝が大きな目的であるため、このように価値が下がります。ただし、経済的利益が30万円以下の場合や、純粋に広告目的の資産である場合は、収入として計上する必要はありません。

あなたの場合、計算によると経済的利益は全体で140万円ではなく、60万円になります(120万円時価の車2台を購入し、合計200万円の価値があるところを100万円で購入したため)。このため、経済的利益は30万円を超えるため、全額が収入として計上される必要があります。

収入として計上した後の減価償却費は、車両の取得価額(支払い+収入に計上した額、合計160万円)を基に計算します。

転用未許可農地の譲渡

Q.私は、平成30年5月に2,500万円で取得した農地を令和5年7月に2,900万円で譲渡しました。この農地は私が農業を営んでいないため、農地法第3条の許可は受けておりません。この場合、土地の譲渡ではなく、権利の譲渡になり総合課税されるものと思いますがいかがでしょうか。

A.あなたが譲渡した農地については、農地法第3条の許可を受けずに取得し、その後売却した場合、これは土地の譲渡ではなく、権利の譲渡になるため、分離課税の対象となります。このケースでは、取得額と売却額の差額から計算される譲渡所得について、短期譲渡所得として課税されます。具体的には、売却価格が2,900万円、取得費が2,500万円で、その差額400万円に対しての税率30%を適用すると、所得税が120万円になります。さらに地方税も考慮する必要があり、その税率は所得税の30%の9%です。確定申告時には、所得税とともに復興特別所得税も申告し納付する必要があるので注意してください。

建築協力金による経済的利益

Q.不動産貸付業者が新しくビルを建築する際にテナントから建築協力金を受け取り、保証金を設定することについて、この資金の使用と課税関係について教えてください。

A.不動産の貸し借りに関わる敷金や保証金などは通常、無利息で長期間保持されるのが通例です。しかし、金銭を無利息または低利率で貸し出した場合、通常の利率で計算される利息と実際に支払われる利息との差額は所得税法に基づく「経済的利益」として認識されます。このようにして、建築協力金をはじめとする敷金等からも経済的利益が生じることになります。建物の賃貸契約を結ぶ際には、受け取った建築協力金の性質は借入金に等しく、低利率または無利息であるため経済的利益が生じると考えられます。ただし、経済的利益の計算には特別な規定があり、注意が必要です。収受した建築協力金や敷金等に対する経済的利益は、不動産所得の総収入金額に算入されるべきものとされています。また、これらの資金を事業活動や他の資産運用に使用した場合は、それによって発生した経済的利益が費用として計上されることになります。

経済的利益に含まれるもの

Q.各種所得の収入金額とされる経済的利益には、どのようなものがありますか。

A.経済的利益として認識される収入金額には、以下のような利益があります。まず、物品や他の資産を無償または安価に譲り受けた際、その資産の時価または時価と実際の対価との差額に相当する利益が含まれます。次に、土地や家屋などの資産(金銭除く)を無償または低価で借りたとき、通常支払うべき対価またはその対価と実際支払った対価との差額に相当する利益があります。金銭を無利息または市場利率よりも低い利率で借りた場合、市場利率で計算した利息またはその利息と実際に支払った利息との差額が利益とされます。さらに、他のサービスを無償または安価に受けた場合、通常支払うべき対価またはその対価と実際に支払った額との差額に相当する利益も算入されます。最後に、債務の免除を受けた場合、その免除された金額や自分の債務を他人が負担した額に相当する利益が含まれます。

分離重課の適用が除外される短期譲渡

Q. 2年前に購入した土地が市の道路用地として市に買収されることになりました。短期保有資産ですが、税率の軽減はありますか?

A. 市へ売却する場合は、軽減税率の対象となります。所有期間が5年以下の土地や建物を譲渡すると、通常は30%の税率で所得税が課税されますが、国や地方公共団体等への譲渡の場合は、15%の税率で所得税が課せられ、税負担が軽減されます。この軽減税率を受けるためには、確定申告時に所定の書類が必要ですが、適正価格要件に関する証明の規定は、一時停止されています。確定申告では、復興特別所得税も併せて申告・納付が必要です。