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株主資本等変動計算書で行う準備金の積立てについての税法の規定

Q.租税特別措置法上の準備金の積立方法と株主資本等変動計算書での積み立てについて教えてください。

A.租税特別措置法では、準備金を積み立てる方法として「損金経理で積み立てる方法」と「剰余金の処分により積み立てる方法」があります。損金経理で積み立てた場合、準備金は損益計算書に記載され、資産または負債として貸借対照表に表示されます。しかし、この方法で租税特別措置法上の準備金を積み立てるのは特別な場合を除き一般的ではありません。

株主資本等変動計算書での準備金の積み立ては、繰越利益剰余金から準備金に振り替える形で行われます。これは「剰余金の処分による積み立て」とされ、租税特別措置法上の準備金の積み立てに該当します。この場合、株主総会での決議により行われることが多いですが、税法に基づく特定の準備金の積立ては株主総会の決議なしで行うことが可能です。

全ての準備金の積立てに関連して、「租税特別措置の適用額明細書」を法人税申告書に添付する義務があります。これは、すべての準備金についての処理が税法上の規定に従っていることを示すためです。

中小企業事業再編投資損失準備金

Q. 当社は中小企業者です。M&Aによるリスクに備えるための準備金の繰入れができるとのことですが、その内容について御説明ください。

A. この制度は、2021年度の税法改正で新設されたもので、特定の条件を満たす中小企業が対象です。この制度を利用することで、M&Aによる経営統合後に発生するかもしれないリスクに対して備えることが可能です。具体的な内容は以下の通りです。

1. **適用対象法人**: 青色申告をする中小企業で、2021年8月2日から2024年3月31日の間に経営力向上計画についての認定を受けた法人が対象です。ただし、特定の業種は適用外です。

2. **適用要件**: 対象となる企業が、経営力向上計画に基づき、他法人の株式等を購入し、その事業年度終了日まで所有し続けている場合に適用されます。ただし、株式等の取得価額が10億円を超える場合は適用外です。

3. **準備金積立ての損金算入限度額**: 取得した株式等の価値が下がった場合に備え、取得価額の70%以内の金額を準備金として積み立てた場合、その金額を損金に算入することができます。

4. **準備金の取崩し**: 積立てた準備金は、積立てから5年経過した後の5年間で均等に取り崩し、益金に算入する必要があります。また、特定の事情が発生した場合には準備金を早期に取り崩す必要があります。

返品率の計算と不良返品及び転送返品の扱い

Q.返品率の計算に際して、不良返品及び転送返品も返品の実績に加えることは可能ですか?

A.返品調整引当金は、平成30年度の税法改正で廃止されましたが、令和12年3月31日までの事業年度開始前は経過措置として認められています。税法上、内国法人が特定の業種において、商品の無条件買戻しや販売先が条件なしで購入する特約を結んでいる場合、返品調整引当金の設定が可能です。計算は売掛金基準か販売高基準に基づいて行われます。この返品率の算定においては、特約に基づく良品返品のみが対象であり、商品の汚れや損傷による不良返品は基本的に含めることはできません。ただし、返品が物理的な理由に基づくのか明確でない場合には、その返品額を含めることも認められます。一方で、転送返品とは、在庫がない場合に他社から返品を受けて顧客に販売する行為を指し、この返品は返品調整引当金には含まれません。返品調整引当金は、製品の無条件買戻しなど特約に基づく返品に対して設定されるため、物的な問題による返品や転送返品は原則として計算に含めることはできません。

売買利益率の計算における低価法の評価損の取扱い

Q.返品調整引当金の繰入限度額を算出する際に、棚卸資産の評価で低価法を用いた時の評価損はどのように扱われますか?

A.棚卸資産の評価で低価法を利用する場合、比較対象となる時価は正味売却価額とされます。これまで時価として再調達原価が使われていた時期もありましたが、その場合は低価法による評価損に原価性が認められ、「原価と時価との差額を営業外費用として処理しつつも、その差額を売上原価に含めて売買利益率を計算する」としていました。しかし、正味売却価額に変わった現在は、評価損の一部に原価性がないため、以前の通達は廃止されました。その結果、評価損は売上原価に含めずに売買利益率の計算を行うことができます。

返品調整引当金の廃止と経過措置

Q.製薬業を営む当社は以前から返品調整引当金を計上してきましたが、平成30年度の税法改正で返品調整引当金が廃止されたと聞きました。廃止の理由と今後の繰入れについて教えてください。

A.平成30年度の税法改正で返品調整引当金は確かに廃止されました。廃止の主な理由は、平成30年3月に公表された収益認識会計基準の導入により、返品権付きの商品や製品の売り上げを異なる方法で計上するようになったためです。従来は、返品が発生する可能性を考慮して、返品調整引当金を計上していましたが、新しい会計基準では、返品が見込まれる商品や製品については当初から収益を計上しないという処理に変わりました。法人税法もこの変更に対応して返品調整引当金を廃止しましたが、返品の可能性がある場合でも、その可能性を考えずに収益を計上する必要が生じます。ただし、経過措置として、返品調整引当金の制度対象事業を営んでいる法人には、令和3年3月31日以前に開始する事業年度では従来通り繰り入れが許され、令和3年4月1日以後に開始する事業年度からは繰入限度額が毎年10%ずつ縮減し、令和12年4月1日以後に開始する事業年度からは繰り入れが認められなくなります。また、収益認識会計基準に準拠した会計処理を行う会社については、返金負債勘定と返品資産勘定の金額を差し引いた金額を、経過措置期間中は返品調整引当金とみなすことができます。

基準年度の実績により実質的に債権とみられないものの額を計算する方法

Q.基準年度の実績によって、実質的に債権とみられないものの額を計算する方法を説明してください。一度この方法で計算すると、継続する必要がありますか?

A.基準年度の実績に基づいて、実質的に債権とみなされないものの額を算出する方法は、特定の算式に従います。具体的には、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度を基準年度として用います。この計算手法を適用することは任意であり、一度適用したからといって以降も継続して適用する必要はありません。もし計算方法が法人にとって不利であれば、代わりに事業年度終了時の状況に基づいて計算を行うことができます。適用可能な法人は、平成27年4月1日時点で存在している法人に限られますが、平成27年4月1日以降に適格合併によって生じた合併法人の場合は、特定の条件を満たす限りこの簡便計算を利用できます。合併法人がこの算式を使用する際、被合併法人からの金額も算式に含める必要があります。

支払手形と債権の計算について

Q.当社が金銭債権を有する相手先に振り出した支払手形は、実質的に債権とみられないものの計算に際して、控除しなければならないのですか。

A.中小法人などが金銭債権を一括評価する際に必要な貸倒引当金の最大額を計算するときは、債権者が持っている金額が部分的または全部が実質的に債権でないとみなされる金銭債権について、その非債権部分に相当する額を引いた残額が計算に使われます。つまり、ある金額を受け取ったがそれが実際には債権とは考えられない場合、その分を引かなければなりません。ただし、貸倒実績率に基づいて計算する場合は、実質的に債権とみられない部分を除外せずに計算します。

あなたが言及している支払手形に関して、相手先がその手形を割引や裏書によって他者に譲渡している場合、相手先が倒産しても手形と債権の相殺は不可能で、したがって実質的に債権とみられないものの計算に際して、支払手形を控除することは理にかなっています。しかし、手形が決済されるまでは手形債務と既存債務が共存し、手形が譲渡された後も既存債務が残ります。これは、手形の受取人が手形の支払いを要求できる別の問題として考えるべきです。従って、支払手形は実質的に債権とみられないものの計算に際して、振り出した相手先への債権から控除しなければなりません。

主たる事業の判定とその見直しについて

Q.卸売業と製造業を組み合わせて行っている法人が、貸倒引当金の繰入限度額を法定繰入率で算定する場合、主たる事業はどのように決まりますか?また、毎事業年度ごとに主たる事業を見直す必要がありますか?

A.卸売業と製造業を同時に営む法人が、一括評価金銭債権に関する貸倒引当金を法定繰入率で計算する際には、事業年度の終了時点での一括評価金銭債権の額に、その法人の主たる事業毎に定められた法定繰入率を乗じて繰入限度額を求めます。原材料を加工して完成品を売る事業は製造業とされ、商品をそのまま売る事業は卸売業です。その法人が行う卸売業と製造業のどちらが主たる事業かは、各事業からの収入額、事業の規模、従業員数、金銭債権の量などの総合的な判断に基づき決定されます。一度、ある事業を主たる事業として判定した場合、その基礎となる事実に大幅な変化がない限り、その判断は継続して適用されます。したがって、毎事業年度ごとに必ずしも主たる事業の見直しをする必要はありません。

中小法人等に特例として認められている法定繰入率による一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入れ

Q.中小法人等に対して特例により認められている一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の法定繰入率による繰入れについて、その内容を説明してください。

A.中小の企業には、一括評価金銭債権(簡単に言うと、一括で評価されたお金を貸している債権)の総額から計算される貸倒引当金(貸し倒れるリスクを見越した引当金)の繰入れに関する特別な規定があります。具体的には、これらの企業は貸し倒れ実績率ではなく、所定の法定繰入率を掛け合わせることで貸倒引当金の上限額を計算でき、この方法を選ぶことが認められています。

この特例適用の条件として、通常、資本金や出資金の総額が1億円以下の法人(一部の例外除く)が対象とされ、特定の規模以上の企業や特定の業種の企業はこの特例の対象外となっています。また、事業の種類によって異なる法定繰入率が設定されており、卸売および小売業には2%、製造業や一部のサービス業には1%、その他の事業には0.5%の率が適用されます。

利用したい企業は、特例の適用を受けるために一定の手続きを行う必要があり、貸倒引当金の計算においては、実質的に債権と見なされない部分の金額を差し引く必要があります。また、この特例の利用には、「租税特別措置の適用額明細書」を法人税申告書に添付することが求められます。

融通手形に対する一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入れの可否

Q.法人税基本通達11-2-17の後段に示されている、「裏書により取得した受取手形で、その取得の原因が売掛金、貸付金等の既存債権と関係ないものについて更に裏書譲渡をした場合には、その受取手形の金額は売掛債権等の額に含まれない」とはどういう意味ですか。

A.この文言は、手形を売掛金や貸付金の回収手段だけでなく、主に融資を受ける目的で受け取る場面について述べています。例えば、ある企業が他の企業から融資を受ける際に、その企業が発行した手形を受け取ります。このケースでは、受け取った手形(債権)と同時に資金を借りること(債務)の両方が存在します。この状況では、手形に関連する貸倒れリスクを想定しないため、貸倒引当金を積む対象外とされています。一般的に、このような融資の手段として受け取られる手形は第三者が発行し、借入先が裏書することが多く、これにより手形は換金しやすくなります。しかし、この手形を割引き(現金化)すると、手形債権が消滅し、基本的には既存の売掛金や貸付金等の債権がないため、一括評価金銭債権として貸倒引当金を積む対象にはなりません。主な理由は、裏書手形や割引手形に関連する貸倒引当金は、既存の債権に対して設定されるものであって、手形の不渡り等のリスクに対応するためのものではないからです。