試験研究に該当しないもの

Q.試験研究に該当しないものについて、参考とすべき情報があれば教えてください。

A.企業が支出した費用が試験研究費に当てはまるかどうかを判断する際、場合によっては迷うことがあるでしょう。この点について、租税特別措置法関連の通達では、試験研究に含まれない活動の例とその説明が提供されています。これらの活動には以下が含まれます:

1. 人文科学や社会科学に関する活動。

2. 既存の製品や技術の構造をそのまま自社製品や技術に利用する目的で解析するリバースエンジニアリングや、単に模倣する活動。例えば、特許侵害がないかの確認のみを目的とするリバースエンジニアリングでは試験研究とは見なされません。

3. 事務員による事務処理手順の変更や部署編成の変更。ただし、技術の開発過程で、自社を実験場として技術の試行を行い、例えば業務改善に資する技術の開発を行った場合は、試験研究に該当することがあります。

4. 既存のマーケティング手法や販売方法の採用や改良、販路の開拓。

5. 性能向上を目的としないデザインの考案や、そこから生じたデザインに基づく設計や試作。

6. 特定の表示のための許可申請に必要なデータ収集等の臨床実験。新たな知見の獲得や既知の知見の新しい応用を目的とした活動は、試験研究となり得ます。

7. 販売のためのマーケティング調査や消費者アンケートの収集。製品開発に適切な設置場所や技術等を調査する場合は、応用研究となり得ます。

8. 既存の財務分析や在庫管理の方法の導入。

9. 既存製品の品質管理、完成品の検査、環境管理。

10. 生産調整のための機械設備の移転や製造ラインの配置転換。ただし、例えば温度や力加減をパラメータ化して作業を自動化するためのアルゴリズムやロボットの開発を行った場合は、試験研究に該当することがあります。

11. 技術的に確立された製品の量産化のための試作、特許の出願や訴訟に関する事務手続。

12. 地質、海洋、天体等の一般的な情報の収集。

13. 製品マスター完成後の市場販売目的のソフトウェア関連プログラムの機能上の障害の除去等。

14. ソフトウェア開発に関するシステム運用管理、ユーザードキュメントの作成、ユーザーサポート、およびソフトウェアと明確に区分されるコンテンツの制作。

試験研究費の税額控除での人件費、減価償却費、固定資産除却損等の取扱い

Q.次の費用の額は試験研究を行った場合の税額控除の規定の適用に当たって、試験研究費の額に含まれますか。① 研究所の事務職員等の人件費 ② 試験研究用資産の減価償却費 ③ 試験研究用固定資産の除却損又は譲渡損

A.①に関して、専門的知識を持った従業員が試験や研究に直接従事する場合の人件費のみ試験研究費に含まれます。したがって、事務職員や守衛、運転手など試験研究に直接関わっていない従業員の人件費は試験研究費として認められません。②に関して、製品の製造や技術改良、新たな役務の開発などのために行われる特定の試験研究に使われる資産の減価償却費は、試験研究費に含まれます。特別償却費も含まれますが、特別償却を準備金方式で計上している場合の特別償却準備金積立額は含まれません。③に関して、試験研究用固定資産の除却損や譲渡損については、臨時や偶発的に発生するものは試験研究費に含まれません。しかし、試験研究の継続過程で通常に行われる更新や取替が原因のものは、試験研究費として認められます。ただし、特定の固定資産に関連する減価償却費や除却損、譲渡損でも、試験研究費として既に認定されたものは、再度試験研究費には含まれません。

試験研究費について国庫補助金を受けた場合の処理方法

Q. 当社が前事業年度以前の研究開発に関して申請した国庫補助金が認められ、間もなく補助金が交付されます。この補助金を雑収入として処理する際、税額控除の計算で試験研究費から控除する必要はありますか?また、前事業年度以前の試験研究費の額を修正する必要はありますか?

A. 税額控除の計算で試験研究費から補助金等を受け入れる額を控除する必要があります。控除されるべき金額には、国や国立研究開発法人などから受けた試験研究費に関連する補助金も含まれます。したがって、質問にあるように補助金を雑収入として処理する場合でも、該当する補助金を試験研究費から控除する必要があります。一方で、前事業年度以前の試験研究費に対する補助金については、それらの試験研究費の額を特定して修正することは不要です。試験研究費や受け入れる補助金類は、事業年度ごとに計算されるため、受け入れた補助金は受け入れ確定年度の益金として計上し、その年度の試験研究費から控除します。

税額控除の対象となる試験研究費の額

Q.試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度で、対象となる試験研究費の額にはどのようなものが含まれますか。また、比較試験研究費の額等の計算では、前事業年度以前の試験研究費の額が必要になりますが、税法改正により試験研究費の額の範囲が変更された場合は、再計算が必要になるのでしょうか。

A.令和5年4月1日以後に開始する事業年度での特別控除制度における対象となる試験研究費は、主に以下の3カテゴリに分けられます:

1. 製品の製造や技術の改良、考案、発明に関わる試験研究で、新たな知見の探求や既存知見の新たな応用に関するもの。このカテゴリには、原材料費、専門知識を持つ従業員の人件費、その他経費(ただし、売上原価等に含まれない部分)が含まれます。また、外部に委託した試験研究費用や、技術研究組合に支払う費用も該当します。

2. 新たな役務の開発に関わる試験研究で、特に情報解析を通じて一定の法則を発見し、その法則を用いた役務の設計と評価を含むもの。このカテゴリでも原材料費、専門知識を持つ情報解析専門家の人件費、その他経費(外注費は一部除く)が計算に入ります。

3. 以上の活動を支える研究開発費のうち、損金処理された金額から固定資産や繰延資産に該当する部分を除いた金額。

なお、税法改正に伴い試験研究費の範囲が変わった場合、既に経過した事業年度に関しても新しい規定に基づいて試験研究費を再計算することが求められます。これは、適切な比較試験研究費の額を算定するために必要です。

中小企業者等以外の法人に対する特別控除の適用制限

Q.当社は、中小企業者等に該当しない法人です。雇用者の給与の増加又は一定額の設備投資がない場合、試験研究費に係る法人税額の特別控除制度が適用されないと聞きましたが、その内容を教えてください。また、他の特別控除制度についても、同様の取扱いがされるのでしょうか。

A.中小企業者等以外の法人には、平成30年4月1日から令和6年3月31日の期間に開始する各事業年度で、雇用者の給与が増加しない、または一定の設備投資を行わない場合、特定の税額控除制度の適用がされない決まりがあります。しかし、その事業年度の所得が前事業年度と比べて減少していない場合には、この制限は適用されません。特別控除制度には以下のものが含まれます:

– 一般試験研究費に関連する法人税の特別控除

– 特別試験研究費に関連する法人税の特別控除

– 地域経済牽引事業の促進区域内で特定事業用機械等を購入した場合の法人税の特別控除

– 認定された特定高度情報通信技術活用設備を購入した場合の法人税の特別控除

– 情報技術事業適応設備を購入した場合の法人税の特別控除

– 生産工程効率化等設備を取得した場合の法人税の特別控除

雇用者給与等の要件として、資本金が10億円以上で従業員が1,000人以上の企業は、継続雇用者給与と比較して給与が1%(令和4年4月1日から令和5年3月31日に開始する事業年度では0.5%)以上増加しているかを確認します。所得がプラスの場合や、設立初年度等では他の要件が適用されます。

設備投資額の要件として、その事業年度の国内設備投資額が償却費総額の30%を超える必要があります。国内設備投資額とは、その事業年度に取得した国内資産の合計取得価額を指します。

これらの要件を満たさない場合、特別控除の適用が受けられないことがありますので注意が必要です。

特別試験研究費の額がある場合の法人税額の特別控除制度の概要

Q.特別試験研究費の額がある場合は、以前説明された法人税額の特別控除制度とは別に、税額控除が認められるそうですが、その概要を教えてください。

A.ご質問の特別控除制度について、租税特別措置法第42条の4第7項に基づくもので、特別試験研究費が発生した場合、その額の20%、25%、または30%を法人税から控除できます。ただし、中小企業以外の企業においては、従業員の給与が増加していない、または一定額の設備投資がなされていない場合、この特別控除は適用されません。この特別試験研究費とは、国や大学等と共同で行う研究、国や大学等に委託する研究、中小企業者から知的財産権の設定や許諾を受けて行う研究、一定の医薬品関連の研究、専門知識を持つ者に対する人件費を支出して行う研究など、政令で定められた研究活動にかかる費用を指します。この制度は青色申告書を提出する全ての法人が対象で、適用終了の期限は特に設定されていませんが、企業が解散する事業年度や清算中の事業年度には適用されません。控除額は「特別研究税額控除限度額」と「税額基準額」のうち、小さい方の額になります。控除限度額は国や大学等との共同研究や委託研究で30%、特定の新事業開拓等の研究で25%、その他の研究で20%を控除。税額基準額は調整前の法人税額の10%で計算します。

中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の概要

Q.中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の概要を説明してください。

A.この特別控除制度は、中小企業や青色申告をする法人全般に適用されますが、特に中小企業者に向けた追加の制度が設けられています。この追加制度を選ぶと、法人住民税の計算においても税額控除の利点が得られます。適用されるのは中小企業者で青色申告をする法人です。試験研究費に対して、特定の条件下での税額控除が可能で、制度の適用を受けることができる事業年度には特定の制限があり、例えば解散した年度などは適用外です。主な特典として、試験研究費に基づき計算された特別控除額が存在し、その計算方法には複数の要素が考慮されます。例えば、事業年度内の試験研究費用の増減比率や所得に対する調整前法人税額などです。特別な試験研究費が含まれる場合、それらは特別控除の対象となる特別試験研究費として扱われます。

一般試験研究費に係る法人税額の特別控除制度の概要

Q.一般試験研究費に係る法人税額の特別控除制度の概要を説明してください。

A.一般試験研究費に関連する特別控除制度は、企業が実施する試験研究の総費用に一定割合を乗じて得られる金額を法人税から控除するものです。この制度は、試験研究費の増加率が高い企業に対して、より多くの税額控除を行うことで、研究開発を促進することを目指しています。この制度は青色申告書を提出する法人(人格のない社団なども含む)が対象となりますが、解散または清算期間中は適用されません。また、中小企業以外で、雇用者の給与の増加や一定額の設備投資がない場合は、この特別控除が適用外となります。

特別控除可能額は、適用する事業年度の試験研究費をもとに計算され、期間内に開始された事業年度に対しては、試験研究費の総額に対する税額控除割合を用いて、税額控除限度額が定められています。税額基準額と比較し、そのうち小さい方が特別控除額になります。試験研究費の増加または減少割合に応じて控除割合が調整され、試験研究費割合が特定の基準を超える場合、さらに加算されることもあります。また、適用期間が設立事業年度や比較試験研究費がゼロの場合には、特別な税額控除割合が設定されています。この特別控除の詳細は、適用事業年度ごとに異なる点や特定条件下での加算額など、複数の要素によって決定されます。

試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度とその特例

Q.試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の構成内容及びその特例と、1事業年度に2以上の特別控除制度の適用を受ける場合の規定を説明してください。

A.試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度は、以下の3つの制度で構成されます。

1. 一般試験研究費に係る法人税額の特別控除制度は、試験研究費用に対して定められた控除が適用されます。

2. 中小企業者が実施した試験研究費に対しては、特別な控除制度が設けられていて、これは一般的な控除制度の代わりに適用されます。

3. 特別試験研究費に係る法人税額の特別控除制度として、一般や中小企業者の制度とは別に、特別な試験研究費がある場合に認められる控除額があります。

また、1事業年度に2つ以上の特別控除制度の適用を受ける場合、これらの特別控除による控除税額の合計がその年度の法人税額の90%を超える場合、超えた分は繰越税額控除として、最も長い控除可能期間を持つものから順に利用することができます。ただし、これらの特別控除制度を利用するには、「租税特別措置の適用額明細書」を法人税申告書に添付する必要があり、添付漏れや虚偽の記載があった場合でも、正しい明細書を提出すれば、特別措置の適用を受けられる可能性があります。

みなし外国税額控除制度

Q.みなし外国税額控除制度とは、どのような制度ですか。

A.みなし外国税額控除制度は、開発途上国との税務条約に基づき、特定の条件下で適用される外国税額控除の一形態です。この制度はザンビア、スリランカ、タイ、中国、バングラディシュ、ブラジルの6か国との間で設けられています。開発途上国における経済成長を支援する一環として、これらの国では特定の産業への投資に対して税金の減免措置が取られています。法人がこれらの減免措置を受けると、外国で支払うべき税金が少なくなるため、原則として日本での税額が増える可能性があります。ただし、みなし外国税額控除制度を利用することで、実際には減免を受けて減少した税金を、仮に減免がなかった場合に支払うべきだった税金としてみなし、その差額分を日本の税金から控除することができます。これにより、開発途上国の減免措置の意図を損なうことなく、投資促進の効果を保持することが目的です。