金品引換券付販売に要する費用の損金算入時期

Q.顧客に対する謝恩販売期間中、特定商品を購入した顧客に売上額の10%相当額の金券を交付します。顧客はこの金券をその引換期間中当店での他の商品の購入代金に充当することができますが、この金券は税務上どのように取り扱われますか。

A.金品引換券付販売においては、金券と交換に渡される金銭または物品が渡された日が属する事業年度に、その代金相当の金額を損金として計上できます。ただし、金券が販売価格や数量に応じたポイントなどで表示されていて、1枚で物品などと交換可能な場合は、特定の計算式により算出された金品引換費用を、販売の日が属する事業年度に損金処理で未払金として計上することが認められています。この方法を選択した場合、金券の未払金額は毎事業年度更新されます。引換期間が定められている場合、その期間が終了していない金券の未払金額は、引換期間が終了する事業年度の利益に計上されます。引換期間が定められていない場合は、販売日が属する事業年度内に発行された金券のうち、その事業年度の終了日までに交換されていないものだけが、その事業年度の未払金として計上されます。未払金の計算をする際は、その事業年度の確定申告書に未払金額の計算基礎や金品引換券の交換条件などを記載した詳細書を添付する必要があります。これらの要件を満たしていれば、金券発行額のうち事業年度終了時の未交換額を未払金に計上できます。ただし、1枚の金券で物品と交換できるものだけが未払金に計上できます。即時使用型と蓄積型の2種類のポイントカード制度があり、即時使用型は発行時に未払金を計上できますが、蓄積型の場合はポイントが一定数に達するまで交換に応じないため、未払金として計上できません。なお、消費税の観点からは、金品引換券の無償提供は非課税取引とされます。顧客が金券を物品と交換する場合、これは「売上げに関する対価の返還等」と見なされます。

従業員が起こした交通事故の損害賠償金

Q.従業員が起こした交通事故の損害賠償金を会社が支払いました。金額が大きく、当該従業員に弁済能力がありません。この損害賠償金を会社の損金として処理した場合、税務上認められるでしょうか?また、損金算入が認められる場合、その時期はいつになりますか?

A.従業員が起こした交通事故に関連する損害賠償金を会社が支払った場合、税務上の取り扱いは、行為が業務の遂行に関連するか、及びその行為が故意または重過失に基づくかによって異なります。具体的には次のように分類されます。

1. 業務の遂行に関連し、故意または重過失に基づかない行為による損害賠償金は、給与以外の損金に算入できます。このケースでは、損害賠償が会社の固有の費用として認められます。

2. 業務の遂行に関連するが故意または重過失に基づくもの、または業務の遂行に関連しない行為による損害賠償金は、当該従業員に対する債権として扱われます。支払能力がなく回収不可能であると認められる部分は、貸倒れとして損金に算入できます。回収可能な部分は給与として取り扱われます。

損害賠償金を損金として算入する場合、具体的な時期は以下の通りです。

– 人身事故に関する損害賠償金は、示談が成立する前であっても、その支出があった事業年度の損金に算入できます。

– 示談成立前に内払いされた治療費や休業補償金も、損害賠償確定額にかかわらず通常は返還されないため、支出時に損金に算入可能です。

– 示談成立前に支払った損害賠償金は、未払金として計上し、損金に算入できます。

また、損金に算入した損害賠償金に相当する保険金がある場合、その保険金を益金として算入する必要があります。

交通反則金の取扱い

Q.従業員が業務の遂行中に交通違反を起こし、交通反則金を課せられました。この反則金を会社が負担した場合、若しくは従業員が納付しないために会社が放置違反金を納付した場合、どのように取り扱われますか。

A.会社が従業員や役員に対して課された罰金や科料、過料、交通反則金を負担した場合、事情によって2つのカテゴリーに分けて処理されます。一つ目は、業務の遂行に関連する行為で課された罰金などで、これには給与としての扱いはせず、会社の費用にはなりますが、税金計算上の損金には算入されません。これは罰金の効果が税率によって減少するのを避けるためです。結果として、交通違反をした従業員には所得税が課されません。もし違反をした運転者が反則金を払わず、車を放置した場合、その放置違反金は会社が負担すると過料として扱われ、これも損金には算入されません。二つ目のカテゴリーはその他のケースで、これには従業員や役員に対する給与として扱われます。したがって、徴収される所得税の対象となり、役員に対する場合は役員給与となりますが、定期的な給与、事前に確定された給与、業績に連動する給与のいずれにも該当しないため、これも損金には算入されません。

罰金、科料、過料、諸課徴金などの損金不算入

Q.法人税法第55条 第4項 は、罰金、科料、過料などを損金不算入と規定していますが、その内容を説明してください。

A.法人税法第55条第4項では、法人が支払う特定の項目は損金にカウントできないと明記しています。これには罰金、科料、過料、国民生活安定緊急措置法に基づく課徴金と延滞金、公正取引に関する法律や金融商品取引法、公認会計士法、不当景品類及び不当表示防止法、医薬品などの品質・安全性に関する法律に基づく課徴金と延滞金が含まれます。罰金や科料などは刑法に定められた財産刑に該当し、さらにこれらの処罰が外国や地方公共団体により課される場合も損金に算入できません。これらは、違法行為や規定違反に対する制裁や懲戒の形です。たとえば、交通違反による罰金もこれに該当します。目的は、こうした罰金や課徴金等を損金として認めることによる税制面からの恩恵を排除し、効果的な罰則としての機能を損なわないようにすることです。また、外国や国際機関が課す制裁金も、罰金や科料と同じ扱いを受けます。これは、外国で罰金を科された場合、それを損金として認めると実質的に日本国が制裁の一部を負担することになり、その国の制裁効果を減じてしまうためです。

不正行為等に係る費用等の損金不算入の規定の内容

Q.法人税法第55条に規定されている不正行為等に係る費用等の損金不算入について、その内容を説明してください。

A.法人税法第55条では、税金の計算で損金として認められない特定の費用や損失について規定しています。これらは主に次の4つのカテゴリーに分けられます。

1. **隠蔽仮装行為に関連する費用や損失**:

   – 法人が実際には発生していない事実を作り上げたり、実際に発生した事実を隠したりすることで、法人税の負担を不当に減少させようとした場合に発生する費用や損失。

   – 例えば、簿外資金を作る行為で発生した交通費、消耗品費、手数料などや、その資金を使った財テク活動による投資損失などが該当します。

2. **特定の違反行為に基づく租税公課**:

   – 国税や地方税に関して、納期限の延長を除く延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税などがこれに含まれます。

   – また、特別法人事業税や特別法人事業譲与税に関する延滞金、過少申告加算金、不納付加算金、重加算金も該当するほか、地方税法に規定する貨物割、譲渡割に関連する遅延税なども含まれます。

3. **罰金、科料、過料などの負担**:

   – 法律違反などが原因で課される罰金や科料、過料、諸課徴金、延滞金などが該当します。

4. **賄賂に関する費用や損失**:

   – 法人が刑法や不正競争防止法に定められた賄賂やその他金銭その他の利益を提供する行為に関連して発生する費用や損失。

また、令和5年1月1日以降に開始する事業年度からは、隠蔽仮装行為に基づき誤った確定申告をした法人について、その事業年度の原価、費用、損失の額を損金に算入できない新たな規定が適用されます。ただし、法人が正当な帳簿書類を保持しており、取引が明確になっている場合など、一定の条件下では損金算入が認められます。

貸倒処理をした債権の一部の金額の弁済があった場合

Q.法人税基本通達9-6-3(1)を適用して備忘価額を控除した金額を貸倒処理した売掛債権について、翌事業年度以後その一部の金額の弁済があった場合、過年度に計上した貸倒損失を取り消さなければなりませんか?

A.お尋ねの内容では、貸倒れた売掛債権の一部が後の年に弁済される状況を想定しています。もしこの一部弁済が最後の支払いであれば、その売掛金がもう法人税基本通達9-6-3(1)での要件を満たさなくなり、問題が生じる可能性があります。しかし、通常、法人税基本通達に基づいて貸し倒れとして記録された売掛金の一部が回収される場合、それは例えば倒産した会社の元役員からの任意の弁済などさまざまな形があり得ます。このような一部回収は、「償却債権取立益」として受け入れることになりますが、過去に計上した貸倒損失を取り消して残りの債権を再評価することは一般的には行いません。従って、過去に通達の要件を満たしていた場合は、一部弁済があった事業年度で得た金額を「償却債権取立益」として計上し、過去に計上した貸倒損失を取り消す必要はありません。

破産手続開始の決定のあった取引先から売掛債権の一部を分配金として受けたとき

Q.破産手続開始の決定のあった取引先に対する売掛債権の50%について、前事業年度中に第3号の貸倒引当金の繰入れを行いました。当事業年度終了時には取引停止後1年以上経過しており、法人税基本通達9-6-3の(1)による貸倒処理を行おうと考えていましたが、債権額の10%に相当する分配金を受領しました。この分配があった場合、取引停止後の期間の算定が中断されるかどうか。

A.貸倒処理を行う際、最後の弁済期または最後の弁済が取引停止後である場合、その時点を基準に判断します。破産手続開始の決定後の分配金も弁済の一環として扱われ、取引停止後の期間の算定が中断されることになります。つまり、分配がある場合はまだ破産手続きが終わっていない可能性があり、貸倒処理を行うのは早すぎます。結果として、法人税基本通達9-6-3の(1)による貸倒処理をその年度には行えず、引き続き貸倒引当金の繰入れを行うことになります。また、貸倒引当金の繰入れを決める基準について、相手先の資産状況などが明確になり、残る配当予測から見て引当額が不足している場合は、より実情に即した引当金への変更を検討すべきです。最初の分配によって債権額が10%減少するため、貸倒引当金の繰入限度額も相当額が減少する点に注意が必要です。

売掛債権の貸倒処理に関する法人税基本通達の取扱い

Q.法人税基本通達9-6-3の(1)の取扱いによって、売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒処理することができるのは、取引停止後1年を経過した事業年度に限られますか。

A.ご質問の売掛債権の貸倒処理が認められるケースについて、法人税基本通達9-6-3の(1)では「債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合」と規定されていますが、その後の貸倒れ処理を行う事業年度に関する特定の制限は明示されていません。これは、該当通達に基づく貸倒処理が最終的な処理ではなく、引き続き当該売掛債権の回収活動が可能であることを意味しています。ただし、貸倒処理の繰延べが恣意的に行われる場合、法人税法第57条第1項の規定による繰越欠損金の控除期間に関連して、課税上の不利益が生じる可能性があるため、そのような状況では貸倒処理による損金算入が否認される可能性があります。

貸倒損失の計上を遅らせて利益操作した場合

Q.金銭債権について回収不能であることが明らかになった事業年度に貸倒処理をせず、その後の事業年度において貸倒処理をすると、税務上どのように取り扱われますか。

A.回収が不可能と判断された金銭債権について貸倒処理を行わずに資産として計上した状態で計算書類を作成することは、資産の過大表示となり、会社法や会計基準に反します。これは税務上も認められない行為であり、利益を意図的に操作することになります。税務上は、回収不能が確定した事業年度に貸倒れを損失として計上することが、法人税基本通達で求められています。したがって、後の事業年度で貸倒処理を行った場合、その損失は税務上認められず、申告する必要があります。この手続きは、利益操作を防ぎ、適切な損失の計上タイミングを確保するために設けられています。ただし、この取り扱いが厳格に適用されることで、回収不能債権の処理について課題が生じる可能性もあるため、適切な時期に貸倒処理を行うことが推奨されます。また、個別評価金銭債権に関する貸倒引当金の計上については、特定の要件を満たす場合に限り、確定申告書提出後でも損金算入が認められることが指摘されています。これにより、適切な貸倒損失の計上が強調されており、利益操作を回避する必要があることが明示されています。

売掛債権を貸倒処理するに当たっての消費税の処理

Q.売掛債権が回収不能となり貸倒処理する場合、貸倒処理する金額に係る消費税額を課税標準額に対する消費税額から控除することができるとのことですが、事例で説明してください。一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合の貸倒実績率は、当該消費税額控除前、控除後のいずれの貸倒損失額によって計算するのですか。

A.貸倒れに伴う消費税額の控除は、消費税法第39条第1項に基づき、課税資産の譲渡等から生じた売掛金などの債権が回収不能になった場合、その売掛金に関連する消費税額を課税標準額の消費税から控除できると定められています。たとえば、ある事業者が商品を販売し、売掛金5,500千円が発生した後に回収不能となった場合、この売掛金に対する消費税500千円(税率10%として)は、事業者が消費税申告をする際に控除対象となります。具体的には、仮付けの消費税500千円から、国税としての消費税390千円と、地方消費税である110千円を控除します。これにより、売掛金の損失が認められた場合は、課税標準額から該当の消費税額を差し引くことができるのです。また、一括評価金銭債権の貸倒引当金繰入限度額を計算する際の貸倒実績率は、貸倒損失の合計額と個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の増減額の平均を分子とし、過去3年以内に開始した各事業年度終了時の一括評価金銭債権の帳簿価額の平均を分母として計算されます。この計算において貸倒損失の額を税込価額で考えれば、計算結果としての貸倒引当金繰入限度額が税抜価額となり、結果として不合理な状況は発生しません。