取崩額と積立額の差額で積み立てることの可否

Q.取崩額と積立額の差額で積み立て、株主資本等変動計算書に差額を圧縮積立金の積立てとして記載してもよいですか?

A.まず、租税特別措置法に基づく準備金に関して差額の積み立てが可能であるとする通達が存在します。これは、損金経理だけでなく、株主資本等変動計算書に記載する積立てにも適用されます。しかし、この規定は準備金にのみ適用されるため、圧縮積立金のケースでは差額を積み立てることは認められていません。そのため、積立額と取崩額を相殺せず、個別に処理する必要があります。ただし、両者を相殺せず積み立てた場合でも、確定申告書の添付書類や株主資本等変動計算書の注記で積立てと取崩しを詳細に記載すれば、認められるケースもあるため、この方法を採用する場合は事前に確認することが推奨されます。

圧縮特別勘定積立金に関しては、将来の圧縮積立金の積立てに充てるために固定資産売却益を留保するものであり、積立対象が異なるため、差額を積み立てることは認められません。圧縮特別勘定積立金と圧縮積立金は税法上異なるものの、同じ固定資産の売却が起因であるため、差額積立てが相当であるとの意見もあります。この方法を利用する際には、確定申告書の添付書類や株主資本等変動計算書の注記に明確に記載し、事前に確認することが推奨されます。

圧縮積立金の初年度の積立て方法

Q.買換資産が減価償却資産のとき、買換えをした事業年度の圧縮積立金の積立ては、どの方法によるべきですか?なお、実際の取得価額に基づいて減価償却費を計上します。

A.この質問に答える前に、具体的な事例を見てみましょう。ある会社が3月31日に決算を迎え、特定の資産を買い換えた場合を考えます。この会社は土地を譲渡し、建物を新たに取得して事業で使用しています。この建物の取得価格が20,000千円で、耐用年数が20年、定額法の償却率が0.050だとします。

この場合、圧縮積立金の積み立て方法は、次のいずれかで行います:

1. 圧縮限度額からその年度の減価償却費に相当する金額を引いた金額を圧縮積立金とする方法。

2. 圧縮限度額を圧縮積立金とし、その年度の減価償却費に相当する金額を圧縮積立金から引く方法。

3. 圧縮限度額を圧縮積立金とし、その年度の減価償却費に相当する金額を益金として計上する方法。

この会社の場合、12,000千円の圧縮限度額に対して、第一年度の減価償却費として200千円を計上することになります。そのため、減価償却費の超過額が300千円となります。それぞれの方法で圧縮積立金の変動を記載すると、次のようになります:

– 方法1では、11,700千円の圧縮積立金を積み立てますが、これは不適切です。

– 方法2では、圧縮限度額相当の12,000千円を積立て、減価償却費相当額の300千円を引く操作を行い、この方法が適切です。

– 方法3では、12,000千円を積み立てたままで、減価償却費の超過分300千円を益金に加えることになりますが、不合理です。

結論として、方法2を採用するべきです。ただし、方法1を選択する場合には、事前に当該手続きについて権限を持つ機関に確認することが推奨されます。

資産を譲渡するための経費について

Q.圧縮記帳の計算において、資産を譲渡するためにかかった経費を補償金等から差し引いたり、譲渡資産の帳簿価額に加えたりする理由は何ですか?そして、この違いによって圧縮記帳の計算がどのように変わるのか説明してください。

A.圧縮記帳では、資産の譲渡に関して受け取る代金には二種類あります。一つは保険金や収用補償金などの補償金的なもので、もう一つは特定の資産の買換えなどで得られる譲渡資産の対価そのものです。補償金的なものの場合は、まずその金額から譲渡経費を差し引き、残った金額を譲渡資産の対価として扱います。しかし、譲渡資産の対価そのものの場合は、譲渡経費を譲渡資産の帳簿価額に加えて計算します。例えば、譲渡資産の帳簿価額が380万円、譲渡経費が50万円、譲渡による受取金額が1億円の場合、収用補償金として受け取った場合と特定の資産買換えの場合で差益割合が異なります。具体的には、収用補償金の場合の差益割合は0.69となり、特定資産の買換えの場合の差益割合は0.57となります。この差によって、譲渡による受取金額が1億円以上の代替資産を取得する際の圧縮限度額が異なり、特定資産の買換えの場合の圧縮限度額は収用補償金の場合に比べて減少します。この違いは、譲渡経費の処理方法によって生じるため、圧縮記帳の計算でこのような区別を行います。

圧縮積立金の積立てに関係する会社法の規定

Q.株式会社では、圧縮積立金の積立ては繰越利益剰余金からの振替えによって行い、株主資本等変動計算書に記載することになりますが、この振替えはいつ行うのですか。剰余金の処分として、株主総会の承認決議を要しますか。

A.株式会社において、圧縮積立金の積み立ては、実際に繰り越し利益の剰余金から振り替える方法で行われます。株式会社では、このような剰余金の振替えやその他の剰余金の処分(損失の補填や任意積立金の積み立てなど)は、株主総会の決議によって決められます(会社法第452条)。ただし、税法や特別措置法に基づいて、繰り越し利益剰余金から圧縮積立金を積み立てる場合、株主総会の決議がなくても許される場合があります。これは、税法が要求する特定の条件を満たす積立てであることを意味し、特に税法で指定された圧縮積立金や特別な準備金の場合が該当します。法務省令である会社計算規則では、法令や定款で義務付けられた剰余金の処分に関する決議なしの項目の増減が可能としており、この特例はそれに当てはまります。そのため、税法に基づいて行う圧縮積立金の積み立ては、株主総会での承認なしで実施できます。協同組合など他の法人では、剰余金の処分に関しては、総代会の決議が必要であり、決算確定日はその総代会が開催される日になります。これは、税法が決算確定日までにという条件を設けており、各種の法人に対しても考慮がされている状況です。

圧縮記帳の会計処理は積立金方式が原則とされている理由

Q.圧縮記帳の会計処理の仕方は積立金方式が原則とされていますが、その理由を説明してください。

A.圧縮記帳の方法には直接減額方式と積立金方式の二つがあります。直接減額方式では、資産の帳簿価額を直接減額する方法ですが、この方法は会社の計算ルールや基本的な会計原則に反するため、一般的には採用されません。一方、積立金方式では、剰余金の処分を通じて圧縮積立金を作り、これを適用することで、会計原則に合った処理が可能になります。このため、公認会計士の協会では、積立金方式を使用することを推奨しています。ただし、特定の条件下では直接減額方式でも問題ないとされています。これには、交換取得した資産や、公共の要請による譲渡後に新たに取得した資産、国庫補助金などで取得した資産が含まれます。これらは、特定のガイドラインや社会的、法的な要請に基づくもので、こうした特例を除き、圧縮記帳は原則として積立金方式で行うべきです。

短期外貨建債権の取得後に先物外国為替契約をしたときの計算とその仕訳

Q.短期外貨建債権の取得後に先物外国為替契約を行い、法人税法施行令第122条の9第1項の規定によって換算差額を直接差額と直先差額に区分して処理する場合の仕訳の方法を、事例で説明してください。なお、直先差額の配分は、同条第3項の規定により月数によるものとします。

A.想定例として、3月31日を決算日とする会社が、ある年の9月1日に翌年の8月31日を満期とする外貨預金100万ドルを、1ドル=143円の為替レートで預け入れたとします。その後、同年12月1日(当日の為替レートは1ドル=141.9円)に、1ドル=141円で先物外国為替契約を結びます。このケースでは、以下のように換算差額を計算し、会計処理します。

– 取得時点の円換算額: 100万ドル × 143円 = 1億43百万円

– 先物外国為替契約締結時の円換算額: 100万ドル × 141.9円 = 1億41,900万円

– 先物外国為替契約による円換算額: 100万ドル × 141円 = 1億41,000万円

法人税法に基づく規定により、取得時点と先物外国為替契約締結時点の差額(直接差額)は1,100万円として処理し、先物外国為替契約締結時とその契約による円換算額との差額(直先差額)は900万円として処理します。直先差額は、先物契約締結日から外貨預金の満期日までの期間に月数で按分して処理します。

仕訳は以下のようになります。

– 9月1日(預入日): 外貨定期預金 1億43百万円 / 預金 1億43百万円

– 12月1日(先物外国為替契約の締結日): 為替差損 1,100万円 、前払費用 900万円 / 外貨定期預金 2,000万円

– 3月31日(決算日): 為替差損 400万円 / 前払費用 400万円(直先差額の8カ月分を配分)

– 8月31日(満期日): 預金 1億41百万円 / 外貨定期預金 1億41百万円、為替差損 500万円 / 前払費用 500万円

ここでは、直先差額の月数按分に基づき、損金処理された額が、決算期ごとにどのように計上されるかを示しています。

圧縮記帳の経理方法

Q.税法上の圧縮記帳にはどのような方法がありますか?

A.税法で認められている圧縮記帳は、法人の収益の一部を税金の計算で後回しにできる制度のことを指します。これには国庫補助金、保険差益、特定資産の売却益などが含まれます。この制度により、これらの収益に相当する部分の帳簿価額を下げることで税金の支払いを先延ばしできます。圧縮記帳には様々な項目があり、それぞれ複雑な規則が存在しますが、基本的には次の2つの方法があります。

1. 取得資産のために金銭支払をしない場合、譲渡資産の帳簿価額を取得資産に付け替える方法があります。この場合、確定決算や剰余金の処分で圧縮積立金を作ることはできません。交換によって得た資産や換地処分によって得た資産などがこれに該当します。

2. 取得資産のために金銭の支払をする場合、取得資産の帳簿価額を直接減額する方法の他、特定の条件下で圧縮積立金を設けることが可能です。この方法では、確定決算時や剰余金の処分を通じて圧縮積立金を積み立てることが認められています。

期末までに取得資産をまだ獲得していない場合は、受け入れた補助金や保険差益などを特別勘定に計上する方法があります。これは、将来、圧縮記帳対象資産を獲得した際に、特別勘定を解消し、上記の方法で処理します。

ただし、圧縮記帳が租税特別措置法に基づく場合は、「租税特別措置の適用額明細書」を法人税中告書に添付する必要があります。

外貨会計基準注7に示されている為替予約等の振当処理と税法の関係

Q.外貨建金銭債権債務等に係る為替予約等の振当処理の方法が外貨会計基準の注7に示されていますが、税法での処理もこれと同じですか?

A.為替予約による差損益は、金利の違いによって生じる金額とされ、これは予約日から決済日までの間に合理的に分配して認識するべきです。これは、金利平衡理論に基づいています。この理論では、外貨の即物為替相場と先物為替相場の差は理論上、二国間の金利差に一致すると説明されています。このため、外貨会計基準の注7では、外貨建金銭債権債務等に関する為替予約等の振当処理に際して、取引時の為替相場と為替予約による為替相場の差額のうちの直接差額をその期の損益として処理し、残額を期間にわたって合理的な方法で配分するようにしています。税法においても、法人税法第61条の10第1項で、この点と同様の為替予約差額の配分方法が規定されています。ただし、税法では先物外国為替契約を結んだ後に外貨建取引を行った場合の処理についても期間配分が規定されていますが、外貨会計基準ではこの点の規定はありません。金利平衡理論によると、この場合も期間配分するべきですが、実務上の複雑さを考慮し、外貨建取引及び金銭債権債務等に為替予約相場による円換算額を適用することができるとされています。

短期外貨建資産等に係る為替予約差額の一括計上

Q.短期外貨建資産等に係る為替予約差額は、期間配分せずに一括計上することができるそうですが、これについて説明してください。

A.通常、為替予約差額は一定の期間にわたって分けて計上する必要があります。しかし、資産が短期の外貨建て資産の場合、この為替予約差額をその事業年度内で一度に計上することが可能です。これにより、発生した事業年度においてその額を利益または損失として全額計上できます。ただし、すでに期間配分を行っている外貨建て資産については、たとえ後にそれが短期資産に該当することがわかったとしても、引き続き期間配分しなければなりません。

短期外貨建資産とは、決済の期限がその事業年度の終了日から1年以内の外貨建て資産のことを指します。この短期外貨建資産等の為替予約差額を一括計上する場合、それぞれの外国通貨の種類ごとに適用することが可能です。この選択をする際は、その事業年度の確定申告書を提出する期限までに、選択する旨を税務署長へ申告しなければなりません。また、一度選択した方法を変更する場合には、税務署長の承認が必要です。

為替予約差額の配分方法

Q.事業年度終了の時に有する外貨建資産等について先物外国為替契約等を行っている場合、為替予約差額はどのような方法で予約期間中の各事業年度に配分するのですか。

A.事業年度の終了時に、売買目的の有価証券を除く外貨建資産などに対し先物外国為替契約等をしている場合、その契約が行われた日(またはそれに伴う外貨建取引が行われた日)から、その外貨建資産等の清算が完了し円貨の受け取りまたは支払いを行う日までの各事業年度にわたって、為替予約差額を配分します。配分された金額は、それぞれの事業年度において益金または損金として計上されます。ここで「為替予約差額」とは、先物外国為替契約等によって確定された円換算額と、外貨建取引が行われた時点の為替相場による円換算額との間の差額を指します。また、この差額の計算には「直接差額」と「直先差額」という二つの方法があり、外貨建取引を行った後に先物外国為替契約を締結した場合は、「直接差額」、先物外国為替契約を締結した後に外貨建取引を行った場合は、「直先差額」を用います。これらの差額は、先物外国為替契約等が締結された日の属する事業年度から清算日の属する事業年度まで各事業年度に配分されます。なお、配分の際には締結日からその事業年度終了日までの日数または決済日までの期間の日数を考慮し、場合によっては前事業年度までに配分された金額を差し引いた金額を配分します。また、特定の条件下では日数を月数に換算することも可能です。