遊体資産の減価償却の取扱い

Q.当社には、工場が3か所ありますが、業況不振のため操業を縮小することとなり、 1か所の工場を閉鎖し、従業員は他の2か所の工場に配置換えをしました。

閉鎖した工場の建物と機械及び装置については、操業停止直前のまま放置していますが、建物と機械及び装置について減価償却してもよいでしょうか。

なお、操業再開については、景気の動向を見極めてからということで現在のところ再開の見通しはありません。

A.工場の建物と機械及び装置に区別して、次のように取り扱うのが適当であると考えます。

1 工場の建物については、機械及び装置等がそのまま存置されていますので、建物としての効用を果たしているものと考えられることから、償却しても差し支えありません。

2 機械及び装置については、稼働休止期間中においても必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものは、償却の対象とすることができますが、例えば、シートで覆って、放置されているものは償却することはできません。

参考:令13(減価償却資産の範囲)、基通7-1-3(稼働休止資産)

事業の用に供した日の判定

Q.当社は、金属機械の製造業を営んでいます。今回、最新式の工作機械を買い入れ、据え付けたところで決算期末を迎えました。まだ、この機械を使って製品の生産を始めておりませんが、当期において減価償却してもよいでしょうか。

A.減価償却資産の償却開始の日は、事業の用に供した日となっています。この「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいます。

御質問の場合、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。

なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではなく、例えば、工具の場合には、使用するために用品倉庫から工場(現場)へ払い出したときに事業の用に供したものと考えられています。

また、賃貸マンションの場合には、建物が完成し、入居募集を始めたときに事業の用に供したものとされており、全室に賃借人が入居しなくてもその建物の全部について償却を開始することができます。

参考:令13(減価償却資産の範囲)、措通65の7(2)-2(買換資産を当該法人の事業の用に供した時期の判定)

平成26年12月31日以前に取得した美術品等の取扱い

Q.当社は3月決算法人で、平成26年4月1日に20号の大きさの絵画を60万円で購入し応接室に飾りました。この絵画については、非減価償却資産としていましたが、取扱いの変更に伴い、再判定を行った結果、減価償却資産に該当することとなります。

この場合、この絵画の償却方法はどのようになりますか。

A.平成26年12月31日以前に取得した美術品等で資産区分を非減価償却資産から減価償却資産へ変更するものについては、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(以下「適用初年度」といいます。)から減価償却を行うこととなります。

この場合の償却方法は、その美術品等を実際に取得した日に応じて旧定額法、1日定率法、定額法、50%定率法又は200%定率法によることになりますが、取得日を適用初年度開始の日とみなすこととして定額法又は200%定率法を選択できるほか、中小企業者等にあっては、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の規定を適用することもできます。

御質問のケースの場合、平成28年3月期から定額法又は200%定率法を用いて減価償却を行うこととなります。

なお、この取扱いは平成26年12月31日以前に取得した美術品等について、適用初年度に減価償却資産に該当するかの再判定を行い、減価償却資産に該当することとなった美術品等に限り、その適用初年度以後の事業年度において減価償却を行うことができるものであり、適用初年度において減価償却資産の再判定を行わなかった場合には、従前の取扱いのとおり、減価償却を行うことはできません。

参考:令13(減価償却資産の範囲)、令48、48の2(減価償却資産の償却の方法)、措法67の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)、基通7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)、平26課法2-12第1二経過的取扱い(経過的取扱い…改正通達の適用時期)

美術品等についての減価償却資産の判定

Q.歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの(古美術品、古文書、出土品、遺物等)に該当しない美術品等についての取扱いが改正されたと聞いていますが、その概要について教えてください。

A.平成27年1月1日以後に取得した御質問の美術品等については、原則として取得価額が1点100万円未満であるものは減価償却資産に該当し、取得価額が1点100万円以上であるものは非減価償却資産に該当するものとして取り扱うこととされました。

なお、取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は減価償却資産として取り扱うことができます。

この「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、例えば、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。

1 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。

2 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。

3 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況が使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

また、取得価額が1点100万円未満の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は、減価償却資産に該当しないものとして取り扱われます。

参考:令13(減価償却資産の範囲)、基通7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)

置物の購入費用の取扱い

Q..当社は、この度、社長応接室に飾るための置物を40万円で購入しました。この置物は減価償却資産として認められますか。

A.美術品等には絵画や彫刻等の美術品のほか工芸品などが該当し、取得価額が1点100万円未満の美術品等は原則として減価償却資産に該当します。

減価償却資産に該当する美術品等は、その構造や材質等に応じて、耐用年数省令別表第一に掲げる区分に従って判定することとなります。

御質問については、置物の材質等が分かりませんが、一般的には、同別表第一の「器具及び備品」の「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」の「室内装飾品」として、その材質に応じた耐用年数により減価償却することとなります。

ただし、この置物の素材が貴金属である場合や時の経過によりその価値が減少しないことが明らかな場合は、非減価償却資産に該当することも考えられます。

なお、取得した置物を社長の自宅に設置するなど、法人の業務遂行に関係がないと認められるものについては、法人の減価償却資産には該当しないので注意してください。

参考:令13(減価償却資産の範囲)、耐用年数省令 別表第一、基通7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)、基通7-1-2(貴金属の素材の価額が大部分を占める固定資産)

物故社員の供養塔の建設費の取扱い

Q.当社は、この度、某寺院の霊地に物故社員の供養塔を建立してその霊を祭るとともに、社員に対する事故防止のいましめにしたいと思いますが、その取扱いはどうなりますか。なお、建立等の費用の見積りは次のとおりです。(1)霊地の永代使用料 500万円(2)供養塔(みかげ石)600万円

A.御質問の供養塔の建設費については、次のように取り扱われます。

1 霊地の永代使用料は、土地の上に存する権利の取得の対価であり、非減価償却資産となります。

2 供養塔の建立費については、会社が将来にわたって保守管理し、事故防止に対する姿勢を示すとともに、物故社員の霊を合祀していくものですから、固定資産に計上し、減価償却していくことになります。

なお、耐用年数は、耐用年数省令別表第一の「構築物」の「石造のもの」の「その他のもの」の50年となります。

参考:令12(固定資産の範囲)、耐用年数省令 別表第一

土地の取得に伴って行った下水道の改修費用

Q.当社は、この度、工場用地を8,000万円で取得しましたが、排水が悪いため従来の下水道を大幅に改修し、鉄筋コンクリートヒューム管、マンホール、U字溝を設置し、その工事費を含め500万円を支出しました。この下水道工事費用は、構築物の取得価額として減価償却してもよいでしょうか。

A.埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額については、原則としてその土地の取得価額に算入しますが、防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて、土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものについては、土地の取得価額に算入しないで構築物として減価償却することができます。

御質問の下水道についても、耐用年数省令別表第一に特掲されており、もともと土地とは独立した固定資産(構築物)として減価償却することができますので、その工事費用を土地の取得価額に含めるか構築物として減価償却するかは、貴社の選択に任されます。

参考:耐用年数省令 別表第一、基通7-3-4(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)

モデルルームの備品の減価償却

Q.当社は、不動産販売業を営んでおりますが、この度、A駅前で建設中のマンションの一室をモデルルームにし、次のような備品を備えつけました。これらの備品は、減価償却資産として取り扱ってもよいですか。① 応接セット ② 寝具(ベッド)③ テレビ、ビデオ ④カーテン ⑤ じゅうたん ⑥ シャンデリア ⑦ 婚礼用三点セットの家具

A.マンションの分譲に際して、その一室をモデルルームにすることはよく見かけられますが、その場合に備えつける備品については、そのモデルルームを設置する目的等によってその取扱いが異なることになります。

例えば、モデルルームの展示期間が比較的短期間であって、展示終了後はそのままの状態でモデルルームと一括してその展示備品が販売されるものであれば、その展示備品は棚卸資産として取り扱われます。

他方、マンション販売の広告宣伝を目的にモデルルームに設置し、展示備品が広告宣伝の用に供されるものであって、次のマンションの分譲の際に改めて使用するようなときには、固定資産として取り扱われます。

その場合の展示備品の耐用年数は、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品」のそれぞれの「細目」のものを適用することになります。

なお、これらの備品の取得価額に応じ、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(【問1-541参照)、一括償却資産の損金算入(【間1-671参照)及び中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(【問1-701参照)の適用があります。

参考:法2XX、令10(棚卸資産の範囲)、法2XXⅢ 、令13(減価償却資産の範囲)、令133(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)、令133の2(一括償却資産の損金算入)、耐用年数省令 別表第一、基通7-1-11(少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定)、措法67の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)、措通67の5-2(少額減価償却資産の取得価額の判定単位)

展示実演用機械の減価償却

Q.当社は、半導体集積回路の製造工程に要する半導体チップ組立装置を製造していますが、顧客の求めに応じて、商品である半導体チップ組立装置の1台を実演用として展示し、随時実演サービスを行っています。
この実演用の機械装置は減価償却してもよいでしょうか。また、この場合の耐用年数は何年を適用すべきでしょうか。

A.展示実演用の機械装置は、展示中に反復実演されることによりその価値が減少しますので、展示実演を開始した(事業の用に供した)ときから、減価償却資産として取り扱うことになります。
御質問の半導体チップ組立装置は、顧客に対する販売促進等を目的として専ら展示実演に使用されるものであり、半導体集積回路の製造工程の一部として半導体集積回路製造業の用に供されるものではありませんので、半導体製造装置製造業者の業種用の設備として使用しているものとして判定することになります。
具体的には、半導体製造装置製造業者は、日本標準産業分類上、中分類「26 生産用機械器具製造業」とされており、耐用年数省令別表第二に掲げる「18 生産用機械器具製造業用設備」の「その他の設備」の12年を適用することになります。

参考:耐用年数省令 別表第二、耐通1-4-2(いずれの「設備の種類」に該当するかの判定)

展示用建物の減価償却

Q.当社は、一団地30戸のプレハブ住宅の建築販売を予定し宅地造成を行っています。
この度、販売予定建物の内部造作の仕様見本としてこの団地完成まで展示し、その後有姿のまま販売する予定で一区画に一棟を先に建てましたが、減価償却資産として経理してもよいでしょうか。
なお、この団地の完成には約10か月を要する見込みです。

A.展示期間終了後、有姿のまま販売するものであれば、もともと販売を目的とする棚卸資産と考えるのが相当であると思われます。
なお、展示期間終了後その建物を取り壊す予定であるとか、展示期間が相当長期間にわたるような場合には、展示を目的とする減価償却資産とすることが妥当であり、その建物を売却したときは、固定資産の処分と考えるべきでしょう。

参考:法2XX、令10(棚卸資産の範囲)、法2XXⅢ 、令13(減価償却資産の範囲)