解散時の利益積立金額がマイナスの場合の清算所得の計算

Q.解散の時における利益積立金額がマイナスの場合、清算所得の金額計算では、このマイナスの金額をどのように扱えば良いのでしょうか?

A.解散時における利益積立金額がマイナスの場合、その金額をマイナスのままで清算所得の計算に使用する必要があります。例えば、会社が解散時に債務が資産を超える状態で、その後債務の一部が免除されることで残余財産がゼロになったとします。この時、利益積立金額がマイナス150として計算され、このマイナスをそのまま用いて清算所得を計算すると次のようになります。0から解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額(マイナス150)を引くと、清算所得は0となります。

法令では、清算所得の金額を、残余財産の価額から解散時における資本金等の額と利益積立金額の合計額を引いた金額と定めています。これにより、利益積立金額がマイナスである場合でも、そのマイナスの額を計算に用います。清算中に資産の処分等で純資産が増加し、その結果利益が発生した場合でも、解散時の利益積立金額のマイナスを無視して清算所得を低く見積もることは不合理だと判断されています。そのため、利益積立金額がマイナスの場合には、その額をマイナスのまま計算に用うのが正しい方法とされています。

清算事業年度中に源泉徴収された所得税額の還付

Q.清算事業年度中に、利子配当等の支払を受けるに当たって課された所得税額で、「清算事業年度予納申告」に係る法人税額から控除されなかった金額は、いつ還付されるのですか。

A.利子や配当などの支払いを受ける際に源泉徴収された所得税で、その年の法人税から差し引くことができなかった部分は、法人が確定申告を行った場合に還付されます。ただし、清算事業年度の予納申告書を提出しただけでは還付されません。この時期に源泉徴収された所得税は、まず清算事業年度の予納申告に基づいて法人税から控除されます。控除できず余った分は、清算時の所得に対する法人税から差し引かれ、それでも余った分は清算確定申告を行った際に還付されます。

清算所得の金額の計算に当たっての利益積立金額等

Q.清算所得の金額の計算に当たり、残余財産の価額から控除する利益積立金額等は、解散の時の利益積立金額とどのように相違しますか。

A.清算所得の金額を計算する際に、残余財産から差し引く利益積立金額等に関しては、以下の金額を合計したものとなります。第一に、解散時における利益積立金額です。次に、清算中に日本の法人(公益法人や人格のない組織をのぞく)から受けた配当などの金額がありますが、これは短期に保有した株式に関する配当を除いたものです。これには、関連法人株式による配当等の総額と、清算期間中に支払われた負債の利息の合計です。さらに、清算期間中に外国の子会社から受けた剰余金の配当等にあたる特定の金額も含まれます。これは、平成21年4月1日以降に解散を行なう法人が対象です。また、清算中に還付された税金、未納の国税や地方税に充当された税金のうち、「還付金等の益金不算入」に該当するもの、外国の子会社から受けた剰余金の配当等に関わる外国源泉税が清算中に減額された額、そして清算中に還付された外国法人税の額のうち、外国税額控除を受けた事業年度開始日から7年以内に開始する事業年度で減額されたものも含まれます。これらの金額を解散時の利益積立金額に加えますが、その過程で、通常の事業年度における受取配当等の益金不算入、還付税金の益金不算入の扱いに準じ、これらの金額を清算所得から差し引くこととなります。

清算所得の金額の計算に当たっての残余財産の価額

Q.清算所得の金額の計算に当たり、残余財産の価額の計算について注意すべき事項を教えてください。

A.平成22年9月30日以前に解散した普通法人や協同組合等の場合、清算所得の金額は特定の算式で計算されます。この算式で用いる残余財産の価額は、清算中あるいは清算終了時に株主などに分配される財産の価額に下記の4つの金額を加えたものです。

1. 清算中に納付される法人税、資産再評価法に基づく再評価税、道府県民税と市町村民税、事業税。

2. 清算中に支出した寄附金のうち、清算業務の遂行上通常必要なものや、国や地方公共団体への寄附金以外のもの。

3. 清算中に外国の子会社から受け取った剰余金の配当などに対する外国源泉税。

4. 清算中に受けた利子や配当、各種補償金、差益などに対して源泉徴収された所得税額。

さらに、解散した内国普通法人等の株主やその親族などが、その法人の発行済株式や出資の一定割合以上を取得し、その取得が事業の重要部分の継承目的であった場合には、特定の算式により計算される金額を無形固定資産と見なし、清算所得の金額を計算します。

このルールは清算中に事業体として譲渡した場合にのれんの価値が表れ、残余財産の価額及び清算所得が増加するケースを考慮したものです。株式等の買い集めが解散前後に行われた場合にもこの特例が適用されます。

平成22年9月30日以前に解散した内国普通法人等に対する課税方法

Q.3月31日を事業年度終了の日とする株式会社ですが、事業不振のため平成22年8月31日に解散し、清算手続に入りました。法人税の申告はどのようにすればよろしいですか。

A.平成22年度税法改正により、清算所得課税が廃止され、解散した内国法人である普通法人や協同組合等に対しては、解散後も各事業年度の所得に対して法人税が課されるようになりました。しかし、この改正は平成22年10月1日以降に解散する法人に適用されるため、それ以前に解散した法人には改正前の規定が適用されます。平成22年9月30日以前に解散した法人には、清算中に生じた各事業年度の所得には法人税が課されず、清算所得に対して法人税が課されます。清算所得の金額は残余財産が確定するまで決まらないため、清算所得についての法人税の予納申告と納付が必要です。清算中の所得に関する予納申告は、清算中の各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内に行い、残余財産の一部分配等に関する予納申告も必要に応じて行います。これらの申告によって提出される書類は、平成22年9月30日以前の解散による清算所得に関する法人税については従前の書式が適用されます。解散による清算所得の計算では、清算によって増加した純資産額に対して税が課され、この予納税額は清算確定申告の税額から控除されます。また、引当金は計上できますが、準備金は計上できず、解散事業年度において準備金の全額を益金算入しなければなりません。清算中の事業年度にも、清算事業年度予納申告書を提出する際に繰越欠損金の損金算入が適用されます。

期限切れ欠損金額の損金算入の要件

Q.期限切れ欠損金額の損金算入を認めるための要件として、法人税法第59条第4項に「内国法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるとき」が掲げられていますが、どのようにしてその判定をするのですか。残余財産が僅かな場合、期限切れ欠損金額の一部の損金算入が認められなければ、清算事業年度中の所得に対する税額の方が多くて、清算結了できないことが生じないでしょうか。

A.「残余財産がないと見込まれるとき」の判定に関しては、法人税基本通達の12-3-7から12-3-9に詳しく説明されています。判定は、清算中に終了する各事業年度終了時の状況に基づき行われます。特に、解散事業年度の翌事業年度に清算が終了する予定であれば、この判定を行うのは最終事業年度のみです。しかし、清算が数年間続く場合は、その間の各事業年度終了時に判定を行います。債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれる」とされます。これは、清算中に資産処分益や債務免除益が発生しても、通常、残余財産を残さないと考えられるためです。残余財産がないと見込まれることを示す書類には、清算中に終了する各事業年度終了時の実際の貸借対照表が含まれます。この貸借対照表を作成する際の資産の価値は、事業年度終了時の処分価額に基づきますが、解散が他の法人への事業譲渡等を前提としており、当該法人の資産が引き続き使用される見込みである場合は、通常付される価額に基づきます。債務超過の法人が資産を処分し債務を弁済することで残余財産を残す場合がありますが、その場合、資産処分益から発生する法人税等の支払いにより、清算結了が困難になることがあります。このような状況では、期限切れ欠損金額の一部の損金算入を認める措置が必要とされることがあります。

期限切れ欠損金の損金算入制度

Q.平成22年10月1日以降に解散する法人に対する所得課税に当たり、適用される「期限切れ欠損金の損金算入制度」とはどのようなものですか。

A.平成22年10月1日以後に解散を迎える法人や協同組合には、解散後も事業年度ごとの所得に対して法人税がかかるようになります。これに伴い、通常の所得課税を整備するために「期限切れ欠損金の損金算入制度」が設けられました。この制度によって、もし法人が解散し、残余財産がなくなると見込まれる場合、その清算中に終了する事業年度以前に生じた欠損金額を基に計算された金額が、事業税等の損金算入前の所得金額を限度として、適用年度の所得の計算上、損金に算入することができます。この「期限切れ欠損金額」は特定の計算方法によって求められます。この制度は特定の記載や書類が確定申告書に添付された場合のみ適用され、残余財産がないと見込まれる場合の詳細が必要です。しかし、記載または書類の不備が税務署長によってやむを得ない事情と認められた場合、制度の適用が可能です。

清算所得課税の廃止に伴う財産課税から所得課税への移行

Q.平成22年度税法改正で清算所得課税が廃止され、解散した法人に対する課税方法が財産課税から所得課税に変更されましたが、所得課税となりますと、残余財産がないのに法人税が課税されることが生じないのでしょうか。

A.平成22年度の税法改正により、解散した内国法人に対する課税方法は、これまでの清算所得にのみ法人税を課す方式から、解散後も事業年度ごとの所得に対して法人税を課す方式に変更されました。この新しい法律は、2010年10月1日以後に解散または破産手続きの開始が決定された法人に適用されます。したがって、2010年9月30日までに解散または破産手続きが開始された法人には、以前の清算所得課税が適用されます。新しい制度では、解散した法人が残余財産がなくても、債務免除などによって所得がある場合は、課税対象になり得ます。しかし、残余財産がなく納税資金が見込めない状況の場合、「期限切れ欠損金の損金算入」を認めるという法律が設けられています。これにより、解散前に債務を免除された場合と解散後に免除された場合で、適用される税務処理が異なります。解散前の債務免除は、繰り越し損失の計算に含まれず、課税所得が生じる可能性がありますが、解散後の債務免除では、残余財産がないと見込まれる場合にのみ「期限切れ欠損金の損金算入」が適用され、債務免除益に対する課税が避けられます。

最後事業年度の確定申告書の提出と株主総会での清算事務報告書承認との関係

Q.最後事業年度の清算確定申告書は、原則として残余財産が確定した日の翌日から1月以内に提出しなければならないとされていますが、当該事業年度の決算は、会社法第507条第3項に規定されている株主総会において承認を受けることになるのですか。

A.内国法人が清算中で残余財産が確定した場合、その確定した日の翌日から1ヶ月以内に最後事業年度の確定申告書を提出する必要があります。ただし、この期限は残余財産の分配や引き渡しが行われる日の前日までとなります。残余財産の分配や引き渡し後には納税資金がなくなるため、分配や引き渡し前に確定申告書を提出して、その中で記載された法人税を期限までに納付しなければならないことになります。

清算事務終了報告総会、すなわち会社法第507条第3項に規定される株主総会は、清算株式会社が清算事務を終了した後、遅滞なく清算報告を作成し、これを提出して株主からの承認を受けるためのものです。この報告には残余財産の額やその1株当たりの分配額を含める必要があり、株主総会は残余財産の分配後に開催されます。

最後事業年度の確定申告と税金の納付は清算事務終了報告総会で報告すべき内容の一部であり、最後事業年度の確定申告書を提出する際には、この総会で承認された決算報告に基づくわけではないため、残余財産の額は総会の決議によって確定されるのではなく、追認されるものです。

また、最後事業年度の確定申告による所得税額の還付が行われる場合も、その還付税金を受領し、含めた残余財産の分配をもって清算事務が終了し、その後に清算事務報告総会を開催して決算報告の承認に基づき清算結了登記を行うことが一般的です。しかし、税務の実施面では清算結了登記完了が税金の還付条件とされるため、未収の還付税金を残余財産として申告し、受領後の分配を清算事務報告書に記載して承認を受けなければならないケースもあります。この場合、清算結了登記後の法人が還付税金を受け取ることはできず、清算事務を行った清算人が受け取り、清算事務報告で記載された方法に従って分配することになります。

株式会社の解散事業年度の決算と株主総会の承認の要否

Q.株式会社の場合、解散事業年度の決算について、臨時株主総会を開催してその承認を受けなければなりませんか。

A.法人が事業年度途中で解散する場合、税法では解散日までと解散日以後を別々の事業年度とみなし、それぞれの所得を計算します。法人税の申告は承認された決算に基づいて行う必要がありますが、解散事業年度の決算について株主総会での承認を法律で義務付けているわけではありません。したがって、臨時株主総会を開催する必要はありません。ただし、会社法では清算人が選ばれた後に清算株式会社の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成し、これを株主総会で承認を受けることが規定されています。この貸借対照表は予測換価価値に基づいて作成されるため、通常の事業年度の貸借対照表や損益計算書とは異なり、株主総会での承認を必要としません。解散事業年度の所得計算においては、税法上の貸借対照表、損益計算書、及び株主資本等変動計算書の作成が要求されますが、これらの書類に対する株主総会の承認も必要とされていません。